協力 〈ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル〉
4月21日にニュー・アルバム『レイモンド V レイモンド』をリリースするアッシャーの最新インタヴューです!
——まずは前作『ヒア・アイ・スタンド』を振り返って頂きたいのですが、あのアルバムはあなたのキャリアにとってどんな意味を持つ作品だったと思いますか?
アッシャー 前作『ヒア・アイ・スタンド』は、俺が(人生で)もっとも誠実な時期に作った作品。俺はその時々の自分を作品にする。自分の経験していることをそのまま音楽にしてきたわけだ。あの時、俺は結婚して子供を授かったばかりだったでしょ。当然とても高揚した。幸せな時期だったから、あのアルバムはその幸福感や情熱を反映した曲が多かったんだ。「ラヴ・イン・ディス・クラブ」や「トレーディング・プレイセス」みたいに楽しんでいる曲もあったけれど、大体は、自分が経験していた大人になる過程について……男性として自分が立っていた場所、どれくらい真剣だったかを表現した曲だった。
——今、おっしゃったように前作は自身の成長過程を描いた作品となっていましたが、今作はどんなコンセプトのもと、制作されたのでしょうか?
アッシャー 『レイモンド V レイモンド』は、前作を作っていた時期、もしくはそれ以前も含めて、自分に対峙する時のことを歌っている。自分が抱えている問題や、様々な責任からただ逃げることだってできるけれど、それを鏡に映る自分に向かって問いただすような内容なんだ。だから、『レイモンド V レイモンド』というタイトルにした。(人には)様々な側面があるけれど、今回は善悪というメタファーを持たせている。その気になればいろんなことができるところを、判断力と思慮深さを持って誘惑に負けないようする……。その過程で、俺は自分に挑戦したんだ。恋愛関係に関して自分を試し、愛情、人生経験、いい経験、ワイルドな経験、いけない方向に行ってしまった時を含めて自分を試した。そういう人生を送っている自分を永遠に覚えていられるように記録するべきだって思ったんだよね。だから、『レイモンド V レイモンド』は自分に折り合いをつけるプロセスを多く歌っている。俺対俺ってことだね。
——T.I.も『T.I VS T.I.P』という作品を作りましたが、(自分自身と一般的なイメージを対比されていたという意味で)ちょっと違うようですね。
アッシャー ああ、それについても話したいんだけど、あれも多くの人が経験するトピックだよね。誰しもオルター・エゴ(もう1人の自分)を持ち始めて、出かける時に切り替えるようになる。家族といる間だけ自分らしくして、世の中に出て行くときは違うエネルギー、違うオーラをまとうようになる。多くのアーティストはある年齢やある時期を経ると特にそういう傾向を持つようになるものだけど、俺はそれをしたくない。俺の場合、オルター・エゴも俺自身なんだ。人は誰も自分自身の最高のサポーターにもなれるし、最悪の敵にもなり得るけど、すべては自分に返って来るでしょ?
——タイトルは自分でつけたのでしょうか?
アッシャー そうだよ。80年代の映画で『クレイマーVSクレイマー』があって、あれも離婚を題材にしていたから、それを引き合いに出してこの作品がそれ(離婚)に絞ったものだと決めつけている人もいるみたいだけど、違うんだ。結局のところ、みんな自分自身と対決して結論を出さないといけないのが現実ってこと。
——あなたは天才的なシンガーですから、歌うことが難しくないのは分かっているのですが、今回の作品には今までとは違うタイプの曲も入っていますし、技術的にちょっとチャレンジした曲はありますか?
アッシャー いや、ないね。ただ、JD(ジャーメイン・デュプリ)は今までのヴォーカル・アレンジメントの中で一番俺をプッシュしたけれどね。ブリッジの箇所に来たとき、「ほら、パンツをしっかり上げて取り組んでくれ」って言われた。「まだまだできる、頑張れ」って。あの曲ではめちゃくちゃ高音で歌わないといけなかったから。さっきも言ったように、この作品は今まで知らなかったことを教えたり知らせたりするタイプの、もしくはアッシャーから出て来なさそうな感情を歌った作品なんだ。正直になることがすべての鍵なんだ。ただ曲を提供するのではなく、経験をまるごと届けて、『レイモンド V レイモンド』を聴いている時に、「彼は俺に向かって話しかけているのかな。まるで俺の経験を歌っているみたいな気がするんだけど」って思ってもらえるといいよね。「エンターテイナーである以上、人に何か考えさせるようなことを届けないと」っていつも考えているよ。
——ゼイトーヴェン(Zaytoven)からウィル・アイ・アム、ジャーメイン・デュプリまで、多彩なプロデューサー陣が参加していますが、2ndシングルはウィル・アイ・アムが作った「OMG」になるのでしょうか?
アッシャー インターナショナルでは1stシングルになるのかな。アメリカでは「ゼア・ゴーズ・マイ・ベイビー」、「リル・フリーク feat. ニッキー・ミナージ」、「ヘイ・ダディ(ダディーズ・ホーム)」、「OMG feat. ウィル・アイ・アム」あたりがカットされると思う。プロデューサー、ウィル・アイ・アムとの仕事は素晴らしかったね……彼の音楽的なアプローチは天才的だと思う。みんなが共感したくなるようなポイントを突くのが上手い。彼がそういうつもりでアプローチしているわけではないかも知れないけれど、あの曲を聴いた時、俺のための曲だって思ったんだ。みんなが歌いたがるだろうけれど、誰でも歌える曲ではないというか。つい踊り出したくなるようなエネルギーが宿っているし、ステージで繰り返して歌っているうちに、観客にも参加してもらいたくなるような曲なんだよ。
——ニッキー・ミナージ、リュダクリス、T.I.が参加していますね。それからリル・ウェインの名前も資料にはあったのですが、実際に聴いたら彼の声はなかったようですが。
アッシャー リル・ウェインはこのアルバムには参加していない。たくさんの人が手伝ってくれて、彼とも曲を作ったけれど収録されないことになったんだ。実は、この『レイモンド V レイモンド』はパート1で、パート2も予定されているんだよ。『www.usherworld.com』をチェックしてくれたらもっと細かいことが分かる。最終的に参加しているのは、リュダ、ニッキー・ミナージ、パフィ、T.I.だ。自分のサウスの寛いだ人間関係の中で尊敬する人たちと仕事をしつつ、新しい才能を紹介するのも忘れなかった。ニッキー・ミナージはあの曲のテーマにぴったりだったし(笑)。パフィは「ソー・メニー・ガールズ」でたくさんヴォーカルを入れてくれた。オープニングの〈King is back, play boy let’s go get’em〉というかけ声も彼だし。世界中を旅して、いろんな女性と付き合って、というライフスタイルを彼以上に理解している人はいないでしょ。
——マイケル・ジャクソンについてのコメントをお願いします。01年のトリビュート・コンサートに参加して一緒に歌うなど、仲が良かったですよね?
アッシャー マイケルがどれくらい厳格な秘密主義者だったかを知っている人は多くないと思う。あの夜、俺は一緒に歌う予定ではなかったんだ。セット・チェンジの途中でマイケルがショウのオーガナイザーに 「ユー・ロック・マイ・ワールド」の途中でアッシャーを呼びたいという意向を伝えたんだと思う。それで、ショウの途中で「ひょっとすると人生でもっとも素晴らしい瞬間になるかもよ」って言われて、「どういうこと?」って聞き返したら、「マイケルが『ユー・ロック・マイ・ワールド』の途中で君をステージに呼び出したいらしい」って。俺は「何でそれを今言うの! 靴も衣装もちゃんと替えたのに、アー!」ってパニクったんだけど(笑)。あれは究極的にはマイケルと彼の兄弟たちのそれまでの軌跡を称えるための企画で、マイケルのステージを生で観てその場に参加するなんて、自分がその劇場に放り込まれたような、一生に一度の体験だったね。マイケルに近付けることなんて、めったにないから。ステージで一緒に歌っている間は、それが現実に起こっているなんて信じられない思いに駆られつつ、どこかで現実だと分かっているような経験だった。
——「OMG」、「モア」などアップが多いようですが、アップが少なめだった前作との差別化を意識してのことでしょうか?
アッシャー 前作はすごくゆっくりだったから、必然的にこうなったね。テンポを上げないといけなかったんだ。それに、『レイモンド V レイモンド』の1人のレイモンドは、すごく動きが速いんだ。クラブにいる時、ステージにいる時、パフォーマンスをしている時の自分は大きな位置を占めているから、それに合う曲は速くなるよね。
——アルバムの聴きどころを、ずばり教えて下さい。
アッシャー 俺はどのアルバムでもポップ・カルチャーにおいてスタンダードを設けてきた。みんなが共感できるようなアーバンな要素を入れて来たというか。それによって、明らかに俺はR&Bのシンガーになるワケだけど、一方で非常にエクレクティック(折衷的)なスタイルの音楽を作っていて、みんなにそこを楽しんでもらいつつ、バリアーを破ってタブーとされているような話題をも歌っている面も分かってもらいたい。R&Bとも、ヒップホップとも、ポップとも言いきれないようなスタイル——『レイモンド V レイモンド』は曲の寄せ集めではなくて、最初から最後まで聴き通さないといけない包括的な“経験”なんだ。
——日本のファンにとくに理解して欲しい曲はありますか?
アッシャー 「シー・ドント・ノウ」と「リル・フリーク」かな。それぞれアティチュードがあって、誇張した曲なんだよね。ダンサブルでどこかしらマーシャル・アーツ(武術)を思い起こすような……振り付けを考えた時、マーシャル・アーツのようなアクロバティックな動きが出てきた。多分、ヴィデオでそれを見せられると思うけれど。
——〈USレコーズ〉から新人を出す予定は?
アッシャー 新人の発掘としては、ジャスティン・ビーバーの世界的な成功が最新ニュースかな。ああいったケースを今後も増やして行きたい。プロデューサーに関していえば、弟のJ・ラックはすごく活躍しているし、新人だとプリティボーイフレッシュ(Alexander ”Prettiboifresh” Parhm)もクールだね。この2人は、どちらもこのアルバムで起用している。「ギルティfeat. T.I.」と「Okay」がそれだ。
——次なる目標は?
アッシャー ポップ・カルチャーを越えるような音楽を作ることかな。自分たちが知っている世界を、音楽を通して変えていきたいんだ。例えば、戦争は現在起こっている問題の1つで、マーヴィン・ゲイは『ホワッツ・ゴーイン・オン』で当時の世相を切り取ったし、ビートルズも同様に見事にその瞬間を音楽にした。文化を越えて、人々にある方向に行くように諭したわけだね。そういうことは、俺にとっても大事なんだ。それから、ライフスタイルにおいてブランド化を図ること。パフィやジェイ・Zも音楽を通じて自分の生活のいろんな側面を見せるのが上手いよね。ジェイ・Zはシャンペンを飲むことを広めたし、パフィはCirocを売っている。文化を異なる場所まで持って行けること、アートを通じて『これを聴いて元気が出て来た、似たような気分を味わおう』って思ってもらうのは大事だよね。
——日本のファンにメッセージをお願いします!
アッシャー 日本のファンのみんな、心から愛しているよ。アリガトウゴザイマス。近々会えることを楽しみにしているから、とりあえず俺のウェブサイト、『www.usherworld.com』をチェックして、俺の世界を共有してもらいたい。すぐ会おうね。ピース。















