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アッシャー インタヴュー

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協力 〈ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル〉


4月21日にニュー・アルバム『レイモンド V レイモンド』をリリースするアッシャーの最新インタヴューです!

——まずは前作『ヒア・アイ・スタンド』を振り返って頂きたいのですが、あのアルバムはあなたのキャリアにとってどんな意味を持つ作品だったと思いますか?
アッシャー 前作『ヒア・アイ・スタンド』は、俺が(人生で)もっとも誠実な時期に作った作品。俺はその時々の自分を作品にする。自分の経験していることをそのまま音楽にしてきたわけだ。あの時、俺は結婚して子供を授かったばかりだったでしょ。当然とても高揚した。幸せな時期だったから、あのアルバムはその幸福感や情熱を反映した曲が多かったんだ。「ラヴ・イン・ディス・クラブ」や「トレーディング・プレイセス」みたいに楽しんでいる曲もあったけれど、大体は、自分が経験していた大人になる過程について……男性として自分が立っていた場所、どれくらい真剣だったかを表現した曲だった。

——今、おっしゃったように前作は自身の成長過程を描いた作品となっていましたが、今作はどんなコンセプトのもと、制作されたのでしょうか?

アッシャー 『レイモンド V レイモンド』は、前作を作っていた時期、もしくはそれ以前も含めて、自分に対峙する時のことを歌っている。自分が抱えている問題や、様々な責任からただ逃げることだってできるけれど、それを鏡に映る自分に向かって問いただすような内容なんだ。だから、『レイモンド V レイモンド』というタイトルにした。(人には)様々な側面があるけれど、今回は善悪というメタファーを持たせている。その気になればいろんなことができるところを、判断力と思慮深さを持って誘惑に負けないようする……。その過程で、俺は自分に挑戦したんだ。恋愛関係に関して自分を試し、愛情、人生経験、いい経験、ワイルドな経験、いけない方向に行ってしまった時を含めて自分を試した。そういう人生を送っている自分を永遠に覚えていられるように記録するべきだって思ったんだよね。だから、『レイモンド V レイモンド』は自分に折り合いをつけるプロセスを多く歌っている。俺対俺ってことだね。

——T.I.も『T.I VS T.I.P』という作品を作りましたが、(自分自身と一般的なイメージを対比されていたという意味で)ちょっと違うようですね。

アッシャー ああ、それについても話したいんだけど、あれも多くの人が経験するトピックだよね。誰しもオルター・エゴ(もう1人の自分)を持ち始めて、出かける時に切り替えるようになる。家族といる間だけ自分らしくして、世の中に出て行くときは違うエネルギー、違うオーラをまとうようになる。多くのアーティストはある年齢やある時期を経ると特にそういう傾向を持つようになるものだけど、俺はそれをしたくない。俺の場合、オルター・エゴも俺自身なんだ。人は誰も自分自身の最高のサポーターにもなれるし、最悪の敵にもなり得るけど、すべては自分に返って来るでしょ?

——タイトルは自分でつけたのでしょうか?

アッシャー そうだよ。80年代の映画で『クレイマーVSクレイマー』があって、あれも離婚を題材にしていたから、それを引き合いに出してこの作品がそれ(離婚)に絞ったものだと決めつけている人もいるみたいだけど、違うんだ。結局のところ、みんな自分自身と対決して結論を出さないといけないのが現実ってこと。

——あなたは天才的なシンガーですから、歌うことが難しくないのは分かっているのですが、今回の作品には今までとは違うタイプの曲も入っていますし、技術的にちょっとチャレンジした曲はありますか?

アッシャー いや、ないね。ただ、JD(ジャーメイン・デュプリ)は今までのヴォーカル・アレンジメントの中で一番俺をプッシュしたけれどね。ブリッジの箇所に来たとき、「ほら、パンツをしっかり上げて取り組んでくれ」って言われた。「まだまだできる、頑張れ」って。あの曲ではめちゃくちゃ高音で歌わないといけなかったから。さっきも言ったように、この作品は今まで知らなかったことを教えたり知らせたりするタイプの、もしくはアッシャーから出て来なさそうな感情を歌った作品なんだ。正直になることがすべての鍵なんだ。ただ曲を提供するのではなく、経験をまるごと届けて、『レイモンド V レイモンド』を聴いている時に、「彼は俺に向かって話しかけているのかな。まるで俺の経験を歌っているみたいな気がするんだけど」って思ってもらえるといいよね。「エンターテイナーである以上、人に何か考えさせるようなことを届けないと」っていつも考えているよ。

——ゼイトーヴェン(Zaytoven)からウィル・アイ・アム、ジャーメイン・デュプリまで、多彩なプロデューサー陣が参加していますが、2ndシングルはウィル・アイ・アムが作った「OMG」になるのでしょうか?

アッシャー インターナショナルでは1stシングルになるのかな。アメリカでは「ゼア・ゴーズ・マイ・ベイビー」、「リル・フリーク feat. ニッキー・ミナージ」、「ヘイ・ダディ(ダディーズ・ホーム)」、「OMG feat. ウィル・アイ・アム」あたりがカットされると思う。プロデューサー、ウィル・アイ・アムとの仕事は素晴らしかったね……彼の音楽的なアプローチは天才的だと思う。みんなが共感したくなるようなポイントを突くのが上手い。彼がそういうつもりでアプローチしているわけではないかも知れないけれど、あの曲を聴いた時、俺のための曲だって思ったんだ。みんなが歌いたがるだろうけれど、誰でも歌える曲ではないというか。つい踊り出したくなるようなエネルギーが宿っているし、ステージで繰り返して歌っているうちに、観客にも参加してもらいたくなるような曲なんだよ。

——ニッキー・ミナージ、リュダクリス、T.I.が参加していますね。それからリル・ウェインの名前も資料にはあったのですが、実際に聴いたら彼の声はなかったようですが。

アッシャー リル・ウェインはこのアルバムには参加していない。たくさんの人が手伝ってくれて、彼とも曲を作ったけれど収録されないことになったんだ。実は、この『レイモンド V レイモンド』はパート1で、パート2も予定されているんだよ。『www.usherworld.com』をチェックしてくれたらもっと細かいことが分かる。最終的に参加しているのは、リュダ、ニッキー・ミナージ、パフィ、T.I.だ。自分のサウスの寛いだ人間関係の中で尊敬する人たちと仕事をしつつ、新しい才能を紹介するのも忘れなかった。ニッキー・ミナージはあの曲のテーマにぴったりだったし(笑)。パフィは「ソー・メニー・ガールズ」でたくさんヴォーカルを入れてくれた。オープニングの〈King is back, play boy let’s go get’em〉というかけ声も彼だし。世界中を旅して、いろんな女性と付き合って、というライフスタイルを彼以上に理解している人はいないでしょ。

——マイケル・ジャクソンについてのコメントをお願いします。01年のトリビュート・コンサートに参加して一緒に歌うなど、仲が良かったですよね?

アッシャー マイケルがどれくらい厳格な秘密主義者だったかを知っている人は多くないと思う。あの夜、俺は一緒に歌う予定ではなかったんだ。セット・チェンジの途中でマイケルがショウのオーガナイザーに 「ユー・ロック・マイ・ワールド」の途中でアッシャーを呼びたいという意向を伝えたんだと思う。それで、ショウの途中で「ひょっとすると人生でもっとも素晴らしい瞬間になるかもよ」って言われて、「どういうこと?」って聞き返したら、「マイケルが『ユー・ロック・マイ・ワールド』の途中で君をステージに呼び出したいらしい」って。俺は「何でそれを今言うの! 靴も衣装もちゃんと替えたのに、アー!」ってパニクったんだけど(笑)。あれは究極的にはマイケルと彼の兄弟たちのそれまでの軌跡を称えるための企画で、マイケルのステージを生で観てその場に参加するなんて、自分がその劇場に放り込まれたような、一生に一度の体験だったね。マイケルに近付けることなんて、めったにないから。ステージで一緒に歌っている間は、それが現実に起こっているなんて信じられない思いに駆られつつ、どこかで現実だと分かっているような経験だった。

——「OMG」、「モア」などアップが多いようですが、アップが少なめだった前作との差別化を意識してのことでしょうか?

アッシャー 前作はすごくゆっくりだったから、必然的にこうなったね。テンポを上げないといけなかったんだ。それに、『レイモンド V レイモンド』の1人のレイモンドは、すごく動きが速いんだ。クラブにいる時、ステージにいる時、パフォーマンスをしている時の自分は大きな位置を占めているから、それに合う曲は速くなるよね。

——アルバムの聴きどころを、ずばり教えて下さい。

アッシャー 俺はどのアルバムでもポップ・カルチャーにおいてスタンダードを設けてきた。みんなが共感できるようなアーバンな要素を入れて来たというか。それによって、明らかに俺はR&Bのシンガーになるワケだけど、一方で非常にエクレクティック(折衷的)なスタイルの音楽を作っていて、みんなにそこを楽しんでもらいつつ、バリアーを破ってタブーとされているような話題をも歌っている面も分かってもらいたい。R&Bとも、ヒップホップとも、ポップとも言いきれないようなスタイル——『レイモンド V レイモンド』は曲の寄せ集めではなくて、最初から最後まで聴き通さないといけない包括的な“経験”なんだ。

——日本のファンにとくに理解して欲しい曲はありますか?

アッシャー 「シー・ドント・ノウ」と「リル・フリーク」かな。それぞれアティチュードがあって、誇張した曲なんだよね。ダンサブルでどこかしらマーシャル・アーツ(武術)を思い起こすような……振り付けを考えた時、マーシャル・アーツのようなアクロバティックな動きが出てきた。多分、ヴィデオでそれを見せられると思うけれど。

——〈USレコーズ〉から新人を出す予定は?

アッシャー 新人の発掘としては、ジャスティン・ビーバーの世界的な成功が最新ニュースかな。ああいったケースを今後も増やして行きたい。プロデューサーに関していえば、弟のJ・ラックはすごく活躍しているし、新人だとプリティボーイフレッシュ(Alexander ”Prettiboifresh” Parhm)もクールだね。この2人は、どちらもこのアルバムで起用している。「ギルティfeat. T.I.」と「Okay」がそれだ。

——次なる目標は?

アッシャー ポップ・カルチャーを越えるような音楽を作ることかな。自分たちが知っている世界を、音楽を通して変えていきたいんだ。例えば、戦争は現在起こっている問題の1つで、マーヴィン・ゲイは『ホワッツ・ゴーイン・オン』で当時の世相を切り取ったし、ビートルズも同様に見事にその瞬間を音楽にした。文化を越えて、人々にある方向に行くように諭したわけだね。そういうことは、俺にとっても大事なんだ。それから、ライフスタイルにおいてブランド化を図ること。パフィやジェイ・Zも音楽を通じて自分の生活のいろんな側面を見せるのが上手いよね。ジェイ・Zはシャンペンを飲むことを広めたし、パフィはCirocを売っている。文化を異なる場所まで持って行けること、アートを通じて『これを聴いて元気が出て来た、似たような気分を味わおう』って思ってもらうのは大事だよね。

——日本のファンにメッセージをお願いします!

アッシャー 日本のファンのみんな、心から愛しているよ。アリガトウゴザイマス。近々会えることを楽しみにしているから、とりあえず俺のウェブサイト、『www.usherworld.com』をチェックして、俺の世界を共有してもらいたい。すぐ会おうね。ピース。

 

シャーデー・インタヴュー

 

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協力 〈ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル〉

10年近く有名人としての脚光を浴びずにいて、ニュー・アルバムでカムバックする有名人のほとんどはピリピリしたり、言い訳をするだろう。キャリアが27年もあるのに、リリース間近の『ソルジャー・オブ・ラヴ』はまだ通算6作目ということは不思議な話であると言われている。緑に覆われた北ロンドンにある広い家で彼女と会った午後、彼女のバンドのギタリストであるスチュワート・マシューマンによってニューヨークで撮影されたグラフィティ化されたポスターの写真を見て彼女は笑っていた。グラマラスな彼女の姿の上に、辛辣な言葉、「This Bitch sings when she wants to」(この女は歌いたい時に歌う)と書いてある。自分を笑う機会を逃さない彼女は、非常におかしいと思っているようだ。

彼女の20年を大まかにまとめていくと、欠点を見つけるのが難しい。彼女は我が道を行き、マネージャーやレコード会社に左右される事はない。90年の初めから、彼女は新しい曲の入ったアルバムを3枚しかリリースしていない。3月にリリースされる『ソルジャー・オブ・ラヴ』と、00年に出した『ラヴァーズ・ロック』には10年ものギャップがある。3作目の『ラヴ・デラックス』は92年にまで遡るリリースだ。最近の習慣にもなっているが、その間の時間はほとんど人目に出ない存在だ。彼女の友人達は億万長者で隠遁者であるハワード・ヒューズから名を取り、彼女を“ハウィー”と呼んでいる。バンド・メンバーの2人がアメリカ在住であるため、メンバーともほとんど会うことはない。彼女が一緒に過ごすのは古くからの友達だけだ。30年間ロンドンに住んでいたが、近年ではイギリスの西部地方にある小さな村での隠遁生活をしている。「いつもの理由に飽きてしまったの」と彼女は言う。彼女は05年に今は13歳になる娘のラーと姿をくらました。そしてこの辺りに住む人々はナイジェリア人のハーフであるスーパースターに関心を持たないことに彼女はとても感謝している。

「私の社会生活のほとんどはロンドンからくるけど、あまり社交的な人間ではないの。普段はものを作ったり、書き物をしたり、ガーデニングをしている。私は土を掘るのが好き。とても分かりやすくて現実的なの。私にとっては錬金術のようだからいつも驚いてしまう。小さな種を植えると信じられないようなものが育つ。音楽を作ることに似ている。こうした気持ちがどこからくるのかって時々考えてしまうけど、私は根っからのカントリー・ガールなのね」

その変化は彼女に向いていたようだ。長い間離れていたシャーデーは少しも老けていない。51歳の誕生日前の彼女の顔にはシワもなく、今も目を引くような姿はステージで見るより大きく感じる。175センチの身長にドーム型の黒い髪がフレームの役割をし、間隔の広いアーモンド型の目は今でもエキゾチックな魅力を醸し出しているのに、彼女は絶対にそれがいいと認めない。「人によく雑誌の表紙に自分の顔が載っているのってどんな気持ち?と尋ねられるけど、私には見えてないし、自分であるとも思わない」

そして彼女はそれを証明するかのように、長年公から離れた生活をしてきた。この15年間で片手で数えるくらいのインタヴューと、1度だけのツアーしかしていない彼女が、なぜ再びポップの市場に誘われてしまったのか考えてしまう。イギリス人女性アーティストとしては史上最高の5000万のアルバム・セールスを記録し、必要以上の額を稼いでしまった。それなのに、彼女の要求はとても控えめである。笑いながら彼女は、「私は沢山お金が必要な人間じゃない。この家に侵入して、30分もいたら、盗むような価値のあるものがないことに気付くでしょう」と言う。確かにそうだ。彼女のロンドンの家の1階の居間は広々としているが、ほとんど家具もなく、白い布製のソファ、磨き上げた床と壁も飾りがない。セントラル・ヒーティングが設置されているのに、このインタヴューをしている間、彼女の年齢ほどの歴史があるような、ロウ・テクでバーが1本しかない電気ストーブの前にある赤いじゅうたんの上に座った。こうした年代物のストーブをいくつも持っている彼女は、「私のお気に入りなのよ」と言う。

彼女が古いものを大切にする姿勢でその生き方さえも分かるはずだ。頑として忠実さをもつ生き物と言ってもいいだろう。83年からずっと仕事をしてきた彼女のバンドのトリオがニュー・アルバムの制作をするようにと騒ぎ出した時、彼女はその圧力に反応した。「バンドがやりたがっていたの。私はロンドンで曲作りをしていたけれど、誰かが来るというプレッシャーが欲しくなかった。自分の好きな時に作業がしたかった。引っ越してからもバンドはまだじっとしていられなかったので、『分かった、やりましょう』って言ったわ。もしかしたら私から引き抜かれたのかもしれない。アルバムを出す度にそう思うけれど、それでも猪突猛進してしまう」

『ソルジャー・オブ・ラヴ』は08,09年、彼女の家の近くにあるピーター・ガブリエルの〈リアル・ワールド・スタジオ〉で2週間に1度のセッションで主に作業を重ね、レコーディングされた。05年に元英国海兵隊と出会い、現在のパートナーとなってからプライヴェートがとてもハッピーになっているものの、彼女の曲はシャーデー特有の哀愁が漂う。なぜだろう?と疑問に思うと、「これが私で、どうしようもないの。ちゃんと悲しみと向き合えれば幸せがやってくると思う。浄化されて、忘れることができると思っている。ハッピーな曲は実際もっと気分が滅入ってしまう。私はあまり塞ぎ込むような人間ではないけど、悲しみに惹かれるみたい。以前誰かに私は最も悲しい星の下で生まれた山羊座だと言われたわ」シャーデーは古いイギリスの諺、「Into every life rain must fall」(どんな人生にも雨は降るもの)が大好きだと言う。

そして彼女の人生に雨が早くに降り落ちた。4才の時に両親が別離したため、地域の看護士をしていたイギリス人の母はシャーデーと兄を連れて帰国し、学問の道を進んでいたナイジェリア人の父はイバダンに残ることになった。彼女達はコルチェスター近くのエセックスサフォークにいる祖父母と暮らし、地元の村で母親が看護士として忙しく仕事をしていた為、シャーデーは早くから自立し、1人で自転車を乗り回したり、カウボーイ映画を見るような、おてんば娘だった。彼女の男勝りな性格は今でも健在だ。低い声、大きな笑い声、足を広げた立ち方、どれも彼女のエレガントなルックスと不思議な相性がある。そんな彼女は今回のシングル曲、「Soldier of Love」でも見られるように、男の視線から曲を作ることが多いと友人達に感想を言われたりする。「きっと私にとって奮闘とは基本的には男っぽいものだと思っているんだと思う」と彼女は言う。

「同じ年頃の女の子がいなかったから、私は兄の友達と遊んでいた。9才になるまで女の子の友達はいなかったけど、自由があった。朝から晩まで自転車に乗ったり、祖父母の庭いじりを手伝っていた。母がフル・タイムで働いていたから、私にはそうした自由を与えるほかなかった」と、子供の頃は他に選択肢がなかったことを彼女は説明する。シャーデーは幼い頃から森を散策し、木登りをしていたので、そうした田舎への興味は娘のラーにも受け継がれている。

美術の才能もあるシャーデーはホルボルンにある〈セイント・マーチンズ芸術学院〉に入学出来、80年代初期はロンドンで急成長していたクラブ・カルチャーに入り込み、プライドというソウル・バンドのヴォーカルをしながら、オンボロのバンを運転して移動していた。

彼女は当初、音楽の道へ進むつもりはなかった。卒業すると、服飾の方に進もうとしていた。しかしほとんど白人が作りだしたソウル・ミュージックに唯一のブラック・シンガーだったため、彼女の存在でバンドの人気も高く、その上、彼女がアメリカン・ソウルのビッグ・スター、ドニー・ハサウェイやビル・ウィザーズのファンだった為、説得させられてしまった。「シンガーとしての自信はなかったけど、曲を作るのが好きだって分かった」、そんな彼女が貢献した曲の1つで、ソロも歌った「Smooth Operator」が出ると、すぐにレコード会社のスカウトの目にとまった。長引いた交渉の末、83年に彼女はプライドを脱退し、ギタリストとサックス奏者のスチュワート・マシューマン、キーボードのアンドリュー・ヘイルとベースのボール・デンマンも一緒に契約することを条件に、〈エピック〉との契約に承諾した。

彼女の名前、シャーデーをバンド名にしてから、彼らはずっと共に活動してきた。長い年月によく音楽について口論もあったけれど、解散や新メンバーの加入は一切なかったが、口論の原因を「それは私の方が音楽に対して繊細だから」と彼女は主張する。シャーデーは女家長の体制でとても密接な関係を保ってきた。「昔から家族の友達のような関係だった。楽しいクリスマスみたいに過ごしているのに、骸骨が出てくる時もあるけど、大抵はとてもいい関係よ」

そんな彼女達の初期の頃にマイナスとなっていたのが、保守的なサッチャー・リズムを応援しているというレッテルが貼られていたことだった。彼女の向上心のある若々しいイメージがその音楽によくあっていて、アメリカン・ヒーローが好むようなドレッシーなスタイルがそれを映し出していた。しかし彼女にヤッピー時代の背景があったことは今でも苦しめられているそうだ。「自分達が内緒でお金をあげているのに、アーサー・スカーギルにも及ばなかったことが嫌だった」と彼女は言う。

彼女が有名になると、名声の不都合な事もすぐにやってきた。世界中で100万単位でアルバムが売れている中、パパラッツィ・カメラマンは数多くの雑誌の表紙を飾っていた彼女の素顔を撮影するために、ロンドンの家の周りの木にまで登ってきていた。彼女のプライヴェートについて真実でない噂が広まったことに怒りを感じ、インタヴューを避けるようになり、今日でもそれは続く。「自分がマスコミに喋ることが、なんだかバスで隣に座っている全ての人に話しているのと同じなんじゃないかと思った。今もそんな風に思えてしまうから、そんなことってしたくないでしょ?」と彼女は言う。それ以降彼女の気持ちは和らいだけれど、90年代に入ると、イギリスはシャーデーへの執拗な追っかけに飽き、注目しなくなったことは彼女をホッとさせた。

イギリスのメディアに干渉されなくなり、銀行に大金があり、『サンデー・タイムズ』のリッチ・リストで彼女が3千万ポンドの財産を保有していると発表され、彼女はキャリアから離れ、プライヴェートに専念するようになった。子供の頃から常に自立していた彼女が異性との関係を上手く行かせるのは容易なことではなかった。「私は辛い代償を支払って来たわ」と恋愛について語る。スペインの映画監督、カルロス・プリエゴとの結婚生活は6年で終わり、「彼は私と世界を共にするのが難しいと思っていた」と彼女は言う。マドリードに家を持ち、できる限りプリエゴと時間を過ごしたけれど、それでも充分ではなく、アメリカ・ツアーで長期不在だったあとに、2人の関係が悪くなった。

続いてロンドンで知り合ったジャマイカのミュージシャンと、96年に娘のラーが誕生したが、キングストンへの慌ただしい旅行を機に、関係が終わってしまった。ストラウドに引っ越してから出会った新しい恋人が彼女の運命の人だと彼女は信じている。「イアンは英国海兵隊、消防士、そして科学者だった。薪割りができて、素敵な笑顔があれば、その人が貴族であろうと、チンピラであろうと良い人なら気にしないといつも思っていた。そして私は教養のあるチンピラと巡り合った」。シャーデーはこれについて大笑いする。「それに一緒に住んでいる義理の息子を儲けて、私はやっと宝くじが当たったように運がいいと思っている」

偶然が重なったのか、彼女は誇りに思えるようなアルバムも作った。この『ソルジャー・オブ・ラヴ』でやっと娘とも絡むことができて良かったと彼女は思っている。「生まれた時から彼女は私の人生の中心になっていた。01年に最後に出たツアーに同行させたけれど、母親に人が声援を送っているのを聞かせたくなかったので、コンサートには行かせなかった。それを耳にするにはまだ早いと思ったの」ティーンエイジャーになった今、ラーは有名な母親の全てを知り、曲についても意見を述べるようになり、「Baby Father」という曲では一緒に歌っている。「ラーが音楽はとても感情的なものだと思うって言ってくれた事で、私には大きな意味があった」とシャーデー。

『Lovers Live Tour』から8年、世の中は今でも彼女を待っていると思うのかと質問すると、長い沈黙の後、「えぇ、思っている。私は物質欲のある人間ではないけど、とても高い志がある。どんなに時間がかかってもベストを尽くすこと以外したくないの。私達に耳を傾けようと思う人達は私達が何をしようと、しなかろうとそれに気付いてくれると思うわ」

クリス・ブラウン インタヴュー

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 1月27日に、待望の3rdアルバム『グラフィティ』をリリースするクリス・ブラウン。「歌って踊れる」彼だけに、日本での人気もかなりのもの。本作は、リル・ウェインとスウィズ・ビーツをフィーチュアした「I Can Transform Ya feat. Lil Wayne & Swizz Beatz」、ルーペ・フィアスコをフィーチュアした「Girlfriend feat. Lupe Fiasco」も収録した、スマッシュ・ヒット間違いなしのアルバムに。クリスに訊いた。

——1st『クリス・ブラウン』、2nd『エクスクルーシヴ』を振り返ると、今の自分と比較してどう変わったと思いますか?  

ブラウン「正直言って背伸びしてたね(笑)。デビューして間もなく、みんなが『ダンスもできて歌える子なんだな』と評価してくれているのが分かったから……。嬉しかったけど、そこから段階を重ねて成長していく必要があった。『クリス・ブラウン』の頃は、『ホットな曲をいくつかレコーディングしてみよう。女の子のことを歌って、彼女らが俺を好きになってくれたらそれでいいや』って感じ。それが16歳の頃、考えていたことかな?   
 
 でも今はもっと広い視野で考えるようになって。それに当時は自分でも何1つ分かってなくて、成り行き任せだったな。で、『エクスクルーシヴ』は俺が18歳の時。誰でもそうだと思うけど、18歳になると自分が大人になった気分になるんだ(笑)。『Take My Time feat. Tank』みたいな曲とか、もっと大人っぽいテーマを歌うようになった。今までよりセクシーに、自分と同じ年ぐらいの男がすることについて歌えたし、自分自身を理解するきっかけにもなったんだ。  

 さらに言うと、1stは自分を世界に向けて紹介すること、知ってもらうことに集中できたけど、2ndでは、自分のスキルを証明しなきゃいけない分、真剣だったよね。今回の『グラフィティ』では、本当の意味で大人っぽい曲をやっていきたいけど、それと同時に他の何曲かはちょっとキッズっぽくってもいいかな?って。最終的にアルバム全体としてバランスがとれていて、グッド・ミュージックに仕上がっていることが大切なんだ。マイケル・ジャクソンから学んだことの1つだね。  

 常にマイケルはどんな年齢層にもアピールする作品を作ったし、世界中の人達がその音楽に共感することができたよね。いつか自分もそういうレヴェルまで作品を持っていけたらと思ってるよ。あらゆる意味でバランスのとれた作品は65歳のファンにもじっくり聴いてもらえるし、3歳の子が俺の音楽に合わせて踊ることもできるからね」

——音楽が好きで仕方ない?  

ブラウン「そうだね、子供の頃からずっと音楽をやりたかったからね。マイケル・ジャクソンとかプリンスみたいな偉大なアーティストの存在を知って、ホントに衝撃を受けたよ。世界中をあっと言わせて、ステージに立ってるたった1人の男にみんなが熱狂する、そういうタイプのエンターテイナーに。だから、そのほんのちょっとでもエンターテイナーってものを経験したかったし、ダンスして、歌って、人を楽しませるようなスターになれたら、ってずっと憧れてたよ」

——ニュー・アルバム『グラフィティ』のコンセプトについて教えてください。  

ブラウン「今の俺はとにかく音楽に集中してる、ってことをみんなに伝えたかった。作曲、レコーディング、パフォーマンスを通じて今の自分の気持ちを表現したかったんだ。俺には伝えるべきストーリーがあるから。『グラフィティ』は俺のアート、クリス・ブラウンのアート。グラフィティはアートだからね。芸術の破壊の形だってことも分かってるけど、ネガティヴなものとして捉えてないよ。  

 グラフィティは違った形、大きさ、色で構成されていて、その多彩性は俺の音楽にも通じると思う。色んなフィーリング、色んな感情。1枚に違うジャンルの音楽がたくさん詰まってるんだ。このアルバムは素晴らしい曲ばかりだし、最初から最後までバッチリ楽しめると思うよ」

——まさにその「多彩性」、ジャンルレスなサウンドは『グラフィティ』の大きなテーマの1つだと思いますが?  

ブラウン「まさにその通り。とにかく色んな音楽を聴いて、色んなアートに触れて、いろんなインスピレーションを得るようにしてるよ。例えばオウル・シティとかコブラ・スターシップ、マイリー・サイラスも好きなんだ(笑)。音楽的にはそういう気分だね、ポップって感じかな?」

——ジャンルレス、ボーダーレスなポップ・スターを目指しているという意味?  

ブラウン「そうだね。ワールドワイドなポップ・スターとして確立することはデビュー当初からの目標で、だから〈ジャイヴ・レーベル〉を選んだのもそれが理由だった。ジャイヴにはイン・シンクやバックストリート・ボーイズ、ブリトニー・スピアーズ、アーロン・カーターみたいなティーン・アーティストを成功させてきた経験とノウハウがあるからね。〈ジャイヴ・レーベル〉の偉大なポップの歴史に、いずれ自分も貢献したいと思ってるよ」

——『グラフィティ』のハイライトをいくつか紹介してもらえますか?  

ブラウン「『I Can Transform Ya feat. Lil Wayne & Swizz Beatz』は、思いっきり楽しんで作った曲。リル・ウェインもスウィズ(・ビーツ)も仲のいい友達だから、レコーディングもヴィデオ・シュートも現場はホントにクレイジーだったよ! 2ndシングルの『Crawl』は……自分が自分らしく、ハッピーでいられる時間、自分の人生の1番素晴らしい瞬間に這って戻ろう、って意味があるんだ。あとはファンのみんな自身が曲と向き合って、直接フィーリングを感じ取ってほしいんだ。

 アルバムの中では『Luckey Me』って曲が気にいってる。マイケル(・ジャクソン)の『Man In The Mirror』のクリス・ブラウン・ヴァージョン、みたいな位置付けの曲だと思ってるんだけど、ハートに訴える、凄くディープな曲だと思うよ」

——20歳を迎えたクリス・ブラウンのドラマと色々な感情が描かれているんですね。  

ブラウン「ニュー・アルバムにはファンに知って欲しいこと、それがどんなことだろうと、そのすべてが詰まってるんだ。俺のこと、俺が経験したこと、俺が今どうしてるか? みんなが知りたがっていることの全てがね。音楽が俺の表現方法なんだ。そして自分の間違いから学んで、前向きに歩いていこうと思う。自分の人生を楽しんで、人生を愛することが大切だから」

——スーパースターであること、社会におけるロール・モデルであることの責任感を痛感してる?  

ブラウン「そうだね。デビューした頃は全く理解してなかったと思う。ロール・モデルとは何か? また、ロール・モデルになる方法も分からなかったんだ。ただ音楽をやって、同じ年頃のファンが理解してくれれば嬉しいってだけだったから、自分がみんなの見本になろうなんて思ってもいなかったんだ。でも今はアーティストとして活躍するチャンスを与えてもらったことを心から感謝してるよ」

——これからの活動の予定は?  

ブラウン「どんな時も音楽がクリス・ブラウンの活動の中心になると思う。でも、俳優業は大好きだから、これからも続けていくよ。俳優って職業は(撮影現場という)閉ざされた環境の中で役を演じて、スクリーンという媒介を通して世界に向けて自分を表現するもの。でも、ステージでクリス・ブラウンとしてパフォーマンスをするってことはもっと自然で、生々しいものなんだ。映画を作ることによって、観客に感動を与えることができるけど、ステージでは誰も経験したことないような、違うレヴェルの衝撃を与えることができるんだ」


流線形と比屋定篤子

    対話 jiro yamazaki a.k.a. jay-brown

06年に発表された1stアルバム『TOKYO SNIPER』のあまりにも高いクオリティ、志にノックアウトされてしまったのは、まだ記憶に新しい。70年代のサウンドをそのままやるのではなく、今のリフォームした形でのプレゼンテーション。流線形ことクニモンド瀧口の才能、恐るべし!と思ったものだった。で、今、比屋定篤子のバック・バンドを流線形がつとめるという設定で制作されたのが、この『ナチュラル・ウーマン』。新曲に加え、比屋定篤子のセルフ・カヴァー、大貫妙子、八神純子のカヴァーという構成に、再び快感。
「今回は、“流線形のアルバム”というよりは、“比屋定さんのバック・バンドを流線形がやっている”というコンセプトで作ったんです。70年代で言えば、いしだあゆみとティン・パン・アレイ・ファミリーみたいな要素を強く出したくて作ったアルバムです。あと、今までヴォーカルは基本的にフィーチャリングなんですけど、バック・バンドとして考えると、流線形のオリジナルを打ち出すというよりは、カヴァーも含めて、比屋定さんの声を楽しむアルバムとして作れたんじゃないかと思います。
(彼女の声の魅力は)すごくストレートで、頑張ってない感じがいいですね。日常生活から生まれ出てくるような歌声。歌う行為って、割と頑張っちゃうところがあると思うんですが、彼女の声は鼻歌的なヴォーカルというか、心地いいんです。系統で言えば、大貫妙子さんとかちょっと近いかもしれないですね。70'sで言うと……例えば洋楽なら、『ローラ・ニーロじゃなくてキャロル・キング』みたいな。情熱的では無くて自然でストレートな感じですかね。
今回のカヴァーの選曲については、レコーディングを始めたのが1年半くらい前なんですが、その時に自分で好んで聴いていたのがたまたまこの2曲だったので、単純にそれをやりたいな、と。八神さんの曲は元は歌謡曲ですけど、比屋定さんが歌ったりバックのノリを変えることで、ダンス・ナンバーというかシティ・ポップ……という言い方あまりしたくないですけど(苦笑)、シティ・ミュージック的なものになるんじゃないかな?と思って。大貫さんの『何もいらない』は、以前から好きだった曲で、是非演奏したいなと。そういうところからカヴァー曲を選びました。1曲目の『ムーンライト・イヴニング』とかは、ちょっとドクター・バザーズ・オリジナル・サバンナ・バンドみたいなテイストでやりたくて。トロピカルな雰囲気の曲って最近あまり聴かないので、それをこの時代に持ち込みたかったんですね。〈ムーンライト〉ってサビやトロピカルなイメージって比屋定さんの明るいヴォーカルに合うので、スチールパンも入れたりとかして。バック・バンドとしてアルバムを制作するとなると、いい意味で成り行きで作れました(笑)。自分のアルバムだと最初から最後まで結構色々と考えるんですけど。コンセプトだけ考えて、なるようになった感じです。彼女のセルフ・カヴァーも入っていますが、ちゃんとしたオリジナルがあるので、オリジナルを越えよう、とか、そういう意気込みでは作っていなくて、単純にアレンジを変えて楽しんで作ることができたという感じですね。とにかく楽しかったです(笑)」(10月20日/駒沢大学にて)

ママズ・ガン インタヴュー

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 エリカ・バドゥのアルバム・タイトルからバンド名をとったというのだから、この時点で期待できるではないか。イギリスからは発信。ソングライティング&ヴォーカルをおこなうアンディ・プラネッツ率いるママズ・ガン。
 既にデ・ラ・ソウル、ラファエル・サディーク、ローラ・イジボアらのライヴのヘッドライナーとしてライヴ展開。
 オープニングの「House On A Hill」、メロウな「Dots Of Gold」、ファンクな「Bitch」、ストリングス&ローズがいい「Miracle」とミドル&メロウないいグルーヴが満載です。

――――あなたのご両親はどちらの生まれで、職業などはどんなことをされていたのですか。

プラネッツ 僕の父はイングランドのワトフォード生まれで、母はフィリピンのCatanduanes生まれなんだ。

――――あなたはどちらで生まれたのですか? よかったら生年月日も教えてください。

プラネッツ 僕の生年月日は79年4月6日。香港の〈British Military Hospital〉で生まれたんだ。

――――音楽に親しむようになったのは、何歳くらいの頃、どんなきっかけで?

プラネッツ まだ幼い頃に、父が持っていたビートルズ、ドアーズ、ELO、エルトン・ジョンなんかのレコードを聴くようになってからかな。で、直ぐにピアノを耳で覚えて、9歳か10歳の頃には学校の友達とキーボードと2トラックを使って曲を書き出したんだ。

――――ママズ・ガンは、あなたを中心に5人組のバンドという形になっています。他の4人のメンバーとは、どうやって出会ったのですか。

プラネッツ 当時同じシーンで活動してたSpilerと最初に出会ったんだけど、Leiws Taylorの音楽が好きだってことで意気投合した。まず、僕ら二人で始めてその後、友達やインターネットを通じて他のメンバーと繋がっていったんだ。

――――ママズ・ガンというバンド名は、エリカ・バドゥのアルバム・タイトルに由来していますよね。なぜこのバンド名にしたのか、教えてください。

プラネッツ 単純にエリカ・バドゥの曲の名前、「Mamas Gun」がバンド名にするにピッタリだと思ったんだよ。本当だよ! RadhioheadだってTalking Headsの曲からだし、Deacon BlueはSteely Danの曲で、The KooksはDavid Bowieの曲からきてる。

――――ママズ・ガンは、ロックやソウルやジャズをミックスした音楽を聴かせています。このような音楽性は、どのように獲得されたものなのでしょう? 音楽性の成り立ちの経緯を教えてください。

プラネッツ 僕が生まれてから今君に曲を届けるまでの間の僕の生き様が音楽の融合を可能にしてるのさ! 世界中を回って育ってきて、スポンジのように様々な音楽を吸収してきたっていうのも影響していると思う。

――――1stアルバムでいちばんやりたかったこと、リスナーに伝えたかったこと、それはどんなことですか。

プラネッツ とにかくより多くの国でリリースしてツアーをしたいんだ。特に明確なメッセージはないんだ。でも感じて欲しいのは、今ある多くのポップ・ミュージックのように「音楽はどれも軽くて平凡で流行りにのっていなくてはいけない」って事はないんだっていうメッセージかな。しかも、このアルバムはソウルでもロックでもファンクでもない。あくまでもポップ・ミュージックで、僕個人やバンドがやりたい音楽を反映しているにすぎないんだ。

――――英国では、ビートルズの時代から90年代初頭まではUKソウル的なニュアンスを持つ音楽が盛んでした。しかし、オアシスやレディオヘッドが台頭して以降、いわゆるUKソウル的な音楽は勢いをなくしているように思います。こうした現在の状況を、あなたはどう見ていますか?

プラネッツ 音楽は巡りまわっている。確かに90年代にアシッド・ジャズが盛り上がった後にブリット・ポップが占領してしまったかもしれない。でも、最近はUKのソウル・シーンの方がまた盛り上がってきていると思う。好きか嫌いかはおいておいて、Amy Winehouse、やJoss Stone, Adele, Daniel MerriweatherなんかはアメリカのクラシックなソウルやR&Bを思い起こさせるサウンドをやってる。そして、Roachford、Mica Paris、Beverly Knightらは今でも現役でバリバリやってるよ。

――――プロデューサー兼エンジニアのジュリアン・シモンズは、今までにどんなアーティストと活動をしてきた人ですか? また、ママズ・ガンのアルバムを手掛けるようになったいきさつも教えてください。

プラネッツ ジュリアンは過小評価されてるけど、イースト・ロンドン在住のエンジニア/プロデューサーで今まで全てのジャンルの音楽を手がけてきた。Jackっていうイギリスで成功したインディーバンドで活動をしていた事もあって、映画監督のTony KayやThe Guilmots、A Girl Called Eddie、Albert Leeなんかとも仕事をしてきたんだ。僕らのドラマーがジュリアンを知ってて、今回やってもらう事になった。完璧なマッチングだったよ!

――――アルバムのミックス・ダウンは、LAでジャック・ジョセフ・プイグが手掛けています。ジャックと仕事をするようになった経緯を教えてください。

プラネッツ アルバムを制作している時のA&Rが、絶対にアメリカのミックス・エンジニアを使ったほうがいいって譲らなかった。で、僕もリサーチして自分のレコード・コレクションの中から自分が好きなレコードを聴き直したりしたんだ。僕はこのアルバムを「ソウルすぎない」音にしたかったから、ちょうどいいバランスを見つけるためにロックを手がけるエンジニアを探していた。僕は90年代のJellyfishのアルバムが凄くすきだった事もあって、それも影響して今回ジャックに頼むことにしたんだ。

――――ママズ・ガンの1stアルバムをより深く理解するためにこれは聴いてほしいと、あなたがオススメする他のアーティストのアルバムを5枚、挙げてください。新旧ジャンルは問いません。

プラネッツ Shuggie Otisの『Inspiration Information』、Herbie Hancockの『Thrust』、Scott Walkerの『Scott 3』、Princeの『1999』、Queenの『Sheer Heart Attack』かな。

『ルーツ・トゥ・リッチーズ』
ママズ・ガン
10月21日発売
〈tearbridge〉 

 

 

 

ジェイ・Z・インタヴュー

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  ノーIDがプロデュースした、先行シングル『D.O.A.(Death Of Auto-Tune)」が物議をかもしている中、リアーアとカニエ・ウェストが参加した、ミドル&メロウな2ndシングル『Run This Town」がリリース。そして、名盤の続々編となるアルバム『ザ・ブループリント』がリリース。
 アリシア・キーズ参加の「Empire State Of Mind」、ファレル参加の「So Ambitious」、ヤング・ジージー参加の「Real As It Gets」とキングな内容。
 また、この作品は長年在籍していた〈デフジャム〉から離れ、〈ライヴ・ネーション〉傘下に設立した〈ロカ・ネーション〉からリリースされる。で、マーケティングとディストリビューションを〈アトランティック〉がおこなうという形式となった。

取材協力 Miyuki Myrthil Watanabe

まずこれだけはクリアにさせてくれ。T・ペインとかカニエ、リル・ウェインがオート・チューンでやったことが悪い、とか言う気は一切ないんだ

——新作『ザ・ブループリント3』が遂にリリースされると聞いて、日本でも皆が心待ちにしています。まず、シングルに関して聞かせて下さい。先日発表された「D.O.A.(Death Of Auto-Tune)」が、日本でもその衝撃的な内容で話題沸騰ですが、(ちなみに『HOT97』がWEBストリーミングを開始したのと、『iPhone』のアプリも出たので、日本でも『HOT97』が聞けるようになり、この曲の盛り上がりがリアルタイムで日本のファンにも伝わっています)。こうした曲を出そう思った直接的、最大の要因は何ですか? また、いつ頃からそうと思っていたのですか?

ジェイ・Z あの曲はハワイでカニエとノーIDと一緒にレコーディングしたんだ。それからNYに戻って、曲を作った2週間後には発表したよ。あの曲を作った理由だけど、まずこれだけはクリアにさせてくれ。T・ペインとかカニエ、リル・ウェインがオート・チューンでやったことが悪い、とか言う気は一切ないんだ。素晴らしいと思うよ、オート・チューンを被されたメロディーなんかはね。「Heartless」とか「Lollipop」はオート・チューン仕様じゃなくてもヒットしたと思うし、良いレコードになってたと思う。
 
 俺が言ってるのは、それに追随して同じような音ばかり作ってる300人くらいのヤツらのことなんだ。ヒップホップで、トレンドがギミックになった時にそれを取り除くのも俺達の仕事なんだ。ビギーのリリックに「お前はクワメと水玉模様みたいにもう流行らねえ」っていうのがあったけど、いつかのスローバックなジャージとかと一緒で、「もう沢山だ、どっか行けよ」とか言いたくなる時ってあるだろ? 

 アイス・キューブが「黒いメダリオンはもういい」って言ったりとか、それにユタの白人の女性までが「ブリン・ブリン」なんて言い出したら、もうそんな言葉は使えなくなるのと一緒だよ(笑)。ダサい言葉になっちまったろ? そういうことさ。それは自然なプロセスだし、俺にしてみればディスっていうよりも挑戦とかハッパかけてるっていう感じだな。「カモン、このカルチャーをもっと前進させてこうぜ」みたいな。大勢のヤツらが1つのところに群がるんじゃなくて、クリエイティヴさを忘れずに行こうぜ、ってね。クリエイティヴさや成長を忘れたら停滞しちまうんだ。

 あの曲のレコーディングの時には、そういやティンバランドもいたんだったな。俺とカニエ、ノーIDとティンバランドで、今のヒップホップ・シーンのこととかについて色々と議論し合ってて、その時にノーIDがあのギターのループをかけたんだ。まだトラックは出来てなくてね。それを聴いて俺達、っていうかカニエもかなり盛り上がってて、「ヨー、これはヤバい、これは全く新しいサウンドだ、これはオート・チューンはナシだな!」とか言ってて。カニエのアイディアかもな、今考えれば(笑)。俺もそうは思ったけど、まさかカニエも、俺がこんなところにまで持ってくるとは思ってなかっただろうな。

ヒップホップを濫用したり搾取したりするだけで、次世代のために大事に育てていくような努力をしなければエネルギーが底を尽きちまう


——リリックを見ると、特定の誰かを標的にしたというより、今のシーン全体へのメッセージに聞こえますが、あなた自身、今のヒップホップ・シーン全体に危機感を持っているのですか?
 
ジェイ・Z 危機感はないよ。ヒップホップっていうのはエネルギーなんだ。だから、ヒップホップのお陰で人生が救われた、と考えるヤツらがちゃんとこのエネルギーを次の世代に受け継いでいけるような努力を怠らない限り、ヒップホップは大丈夫だよ。ヒップホップを濫用したり搾取したりするだけで、次世代のために大事に育てていくような努力をしなければエネルギーが底を尽きちまう。

 だから俺の仕事は、まずアーティストとして、人が聴いてインスパイアされるようなものをクリエイトし続けていくことだし、それからゴミみたいなものが出て来たら、きっちりと掃除してクリーンなエネルギーを保っていくことなんだ。「D.O.A.」は他の何物でもなく、挑戦状なんだ。「ステップ・アップして前進しようぜ」っていうな。

——また〈I made this just for flex and mr cee〉とリリックにあって、現に『HOT97』で初オン・エアしたり、とかなり原点回帰なオーセンティックな展開をしていましたが、あなた自身、”ヒップホップ(及びラッパー)は原点回帰すべき”と強く思っているのですか?   
 
ジェイ・Z 俺は『ザ・ブループリント』を「ニュー・クラシック」と呼んだんだけど、俺もラップを始めてもう12、3年になって、昔自分が尊敬してたような存在に近づき始めてる。シナトラとかマーヴィン・ゲイとかさ。彼らは歴史を作った人物だけど、今のこの世代にとってのそういう存在に俺達がなりつつあるんだってことさ。だから、俺はクラシックな音楽——時代やリスナー層に左右されない、っていう意味で、エモーショナルなところからくるような音楽で、さらには他の誰の物真似でもない、新しいもの、新しいクラシック(ニュー・クラシック)を作ってるんだ。

——『HOT 97』の『SUMMER JAM』でパフォーマンスした時、オート・チューンの申し子=T・ペインもステージに共に上がっていましたが、これはハプニングですか?

ジェイ・Z あれはサプライズだったんだ。あれがT・ペインに対抗する曲だと見なされる理由はよくわかる。だけど実際はそうじゃないし、T・ペインもそれを皆に知らせたかったってことじゃないかな。ヤツがステージのどこからやって来たのかも知らないけどね。俺はジーズィーのセットのゲストだったし、ステージの前後でもT・ペインと話す機会はなかったよ。

音楽はアートだろ? で、アートっていうのは主観的なものなんだ。それを観賞する人間が色々な視点から議論すればいい

——トレイ・ソングスが「Death Of Kellz」を発表したり、ワイクリフが「Mr.Autotune」というパロディ曲を発表したり、早くもリメイクやアンサー・ソングなどがインターネットやミックス・テープを賑わせ、まさに社会現象的なムーヴメントになっていますが、こうしたリアクションは予想の範囲内ですか? それとも予想以上でしたか?

ジェイ・Z ああ、「D.O.A.」ではわざと音楽をフェード・アウトさせずに、トラックをかけ続けておいたんだ、そうすりゃ色んなヤツらが楽しくやれるかなと思って(笑)。音楽っての論議を呼ぶようなものであるべきだろ? ただ聴いて終わり、っていうんじゃなくて「こいつはこう言ってるけど俺はそうは思わねえ」とか、色々な考えを刺激させるようなものっていうか。音楽はアートだろ? で、アートっていうのは主観的なものなんだ。それを観賞する人間が色々な視点から議論すればいい。

——この曲のヴィデオはもう撮影したと聞きましたが、どんなヴィデオなんでしょうか? (監督やコンセプトなど)ヴィデオもまた、コントラバーシャルな内容なのですか?

ジェイ・Z 監督はアンソニー・マンドラー。ヴィデオは、さっきも言った「ニュー・クラシック」っていうのをなぞるような、ある日常の風景をクラシックな人選で追ったものだよ。バスケしたり、メシ食ったりっていう普通のことをしてる。ギミックは一切無い。

 ……これは今話していいのか分からないけどまあいいや、知るか(笑)、70年代だったかな、確かゼン・ブランスキーっていう名前の監督が作ったフィルムがあって、そこではポップ・カルチャーにまつわる色々なものが爆破されるんだ。そのフィルムに凄く影響を受けてるよ。そんな影響もありつつ、全体的には「他のヤツらは色々なことをやってるけど、俺はコレだ」ってのを見せてる。

 高級車が100台とか、シャンペンがどっさり、っていうんじゃなく——でもそういうのも、今後の俺のヴィデオでは出て来るかもしれないけどな、俺にも祝福したりする時間はあるわけだから、だけど俺は朝の10時からシャンペン飲んだりはしないけどな(笑)。でもこのヴィデオはそういう時間以外の普通の、クラシックな部分を切り取った映像になってるんだ。

——今、人気急上昇のドレイクが参加した「Off That」という曲が次にシングル・カットされると報じられていますが、本当ですか? ドレイクのどんなところに魅力を感じ、どんなところを評価していますか?

ジェイ・Z (一瞬沈黙)俺自身どの曲がアルバムに入るかすら知らないんだぜ。どこからそんな情報を手に入れるんだろうな(笑)。「Off That」っていう曲はあるし、良い曲ではあるから、だからきっとそれを次に出せ、っていう意味なのかもな。だけど正直なところ、どの曲がアルバムに入るのか俺はまだわかってない。

 発売日が9月11日、そこだけは決まってるし、それに間に合わせるためのデッド・ラインがあるから、俺は曲を作ってレコーディングして、の繰り返しだよ。曲数は10から14曲くらいになるかな。俺はアルバムを1つのまとまりだと考えてる。未だにね。アルバム全体につながりがなきゃならないんだ。

 「Off That」みたいな曲は、アルバムの残りの曲よりももっと良い出来かもしれないけど、そのせいで流れとかムードを変えてしまうってこともある。俺はアルバムのフロウ全体を見て曲を選ぶから、アルバムに入るかどうかは分からないな。すごく良い曲なんだけどね。

 ドレイクは、まだアルバムを出してないから評価しづらいけど、ミックス・テープとかで見せてきたものから判断するには、人の感情を引き出すのも巧いし、イイ線いってるんじゃないかな。ドレイクはカニエ以降のジェネレーションのリーダー的存在になれるかもな。カニエは「自分らしさ」を押し出したことで色々なヤツらの風穴的存在になったよな。誰もがドラッグ・ディーラーとか高校で大人気の存在な訳がないだろ?

ここからどうやってクリエイティヴに先に進んでいけるかが俺達の挑戦なんだ

——前作『アメリカン・ギャングスター』は映画のインスパイア・アルバムということだったので、オリジナルとしては2年ぶりのこのアルバムを、あなたの代表作である『ザ・ブループリント』の名を冠してリリースしようと思った理由は何ですか?

ジェイ・Z インスパイア・アルバムであっても、俺が作ったアルバムには変わりないけどな。あの映画にはちゃんとサントラもあったし、俺のアルバムはまた別物だし、俺はあの映画のエモーションに影響されてあれを作ったんだ。

 『ザ・ブループリント』の名を冠したことについては、まず1枚目では、俺がガキの頃から聴いて育ったような、クラシックなソウル・ミュージックのサンプルを使って、俺の馴れ初めっていうか、俺を俺という人間たらしめたものをそこで表現しようと思ったんだ。そこから2枚目を経て、今回が3部作の最終章ってこと。

 ヒップホップはまだ産まれてから30年ちょっとしか経ってないから、まだ新しい音楽ではある。でもここにきて壁にぶち当たってると思うんだ。出来始めの頃はまだあらゆるところから自由に何でも持って来ても大丈夫だったけど、ここに来て全てものが出尽くし、試されたような状況になってる。ここからどうやってクリエイティヴに先に進んでいけるかが俺達の挑戦なんだ。

 だけどそうするためには、ブループリント(青写真)を手にする必要がある。何か新しいものを作ったり建てたりする時にはそれが要るだろ? だから俺はこれを「ニュー・クラシック」と呼ぶんだ。あの頃のフィーリングや感情に立ち戻りつつも、新しいことをするっていう意味で。

——アルバムは『ザ・ブループリント』と同じ9月11日に発売という事ですが、あなたにとって01年『ザ・ブループリント』という作品はどんな意味を持っていて、どんな位置付けの作品なのでしょうか?

ジェイ・Z ああ、勿論あのアルバムは色々な意味で特別な存在だよ。あれをリリースする前にも数枚はアルバムを出してたけど、あのアルバムを出すことで自分のキャリアが一度仕切り直しされたように感じてた。

 さっきも言った青写真、っていう意味もあるし、それに発売日にあんな惨事が起きて、っていう意味合いもあるけど。それからあのアルバムを聴いて辛い状況を乗り越えてた人間が沢山いたんだ。特にここ(NY)じゃね。あれだけの衝撃的な事件があってもアルバムがそれなりに売れてた、ってことは、人々があの時、音楽で癒しを求めてたってことなんだ。

 発売日にあんなことになって、俺はもうあのアルバムについてプロモーションしたりすることも一切するつもりはなかったんだ、それどころじゃないだろうし、もう自分としてはこの上なく上出来なアートを作り終えた気分だったし。だけど9.11が起きた直後でもアルバムの売れ行きが止まらないのを見て、「ああ、皆がこのアルバムを聴いて逆境の乗り越えてるんだな」って実感したんだ。

 もちろん、あの日付を好き好んで選んだんじゃないよ、当たり前だよな、誰もあんなことが起きるとはまさか思ってなかった訳だし。それでもあの事件を経験して以来、俺なりに9.11にはチャリティ・イヴェントをしたりしてきてる。今回もまた同じ日付にリリースすることによって、自分の中で3部作が完全な円を書いて完結するとか、そんな意味もあるんだ。

自分の仕事に誇りを持って前に進もうとしてるヤツだな。新しくてエキサイティングなヤツらと仕事するのが好きだな

——一説によると、今年のグラミーでもパフォーマンスした「Swagger Like Us」が、ヤング・ジージーらが参加した別ヴァージョンが収録されるのではというウワサもありますが、本当ですか? また、映画『ノートリアス』のサントラへ提供していた「Brooklyn Go Hard」もファンとしては、収録して欲しいところですが、可能性はありますか?

ジェイ・Z 「Swagger Like Us」についてはウソだな。それは有り得ない。「Brooklyn Go Hard」は、ビギーの映画のサントラに収録される方が状況としてもタイミングとしてもベターだから、あの曲は〈バッドボーイ〉に提供したんだ。

——また、今回のアルバムにはどのようなプロデューサー、ゲストが参加していますか? カニエ・ウェストとノーIDがメインで制作をしていると報道されていましたが……本当なら、カニエの起用も01年の『ザ・ブループリント』を彷彿とさせますね。

ジェイ・Z カニエが殆どの曲を手掛けてるよ。アルバムの基盤はカニエが作ったと言ってもいいかな。それからティンバランドとも5、6曲やった。それからノーID。現時点ではこの3人とやったけど、デッド・ラインまであと1ヶ月半あるからね。これからどうなるかはまだまだわからないし。

——ジャスト・ブレイズとは?

ジェイ・Z アリだな。

(スタジオに同席していたジャスト・ブレイズの右腕的エンジニア兼〈デフジャム〉A&Rを経て〈ロック・ネイション〉でもA&Rを務めるヤング・グールーがすかさず「ジャストが今このスタジオに来たいって言ってるんだけど」、と横からコメント)

ジェイ・Z ならジャスト呼べよ。(ヤング・グールーが電話をしに席を立つ)。完璧なタイミングだったな(笑)。

 それからカニエの起用が01年を彷彿とさせる、って話だけど、当時のカニエとのケミストリーはクレイジーだったよ。ヤツは新人だったし。でも今やヤツも成長して、レコーディングじゃ俺と互角に渡り合うようになったんだ。曲がどう展開するべきか、サウンドがどう聴こえるべきか、って色々アイディアをぶつけてくるし、カニエとそういう関係になったのは新しい経験だよ。健康なことだし、気に入ってるよ。

——今の音楽シーンであなたほどの存在であれば、誰とでも仕事をすることが可能だと思いますが、そんな貴方がゲストやプロデューサーを選ぶ基準は何ですか?

ジェイ・Z うーん、自分の仕事に誇りを持って前に進もうとしてるヤツだな。新しくてエキサイティングなヤツらと仕事するのが好きだな。ブレイクする前のヤツらをキャッチするんだ、その方が新しいアイディアにオープンだったりもするし。俺はビッグ・ネームを招き入れるよりもクリエイティヴィティを優先するな。これまで俺が選んだヤツらを見ても、ルーペ(・フィアスコ)だったり、サント・ゴールドだったり、TIとかカニエ、ジャスト・ブレイズもそうだったよな。

——スター発掘。

ジェイ・Z ああ、俺はスター・メイカーだ(笑)。

自分が本当に好きなヤツらと仕事ができるっていう今の境遇は、本当に恵まれてると思う

——今回のアルバムを制作する上で、あなたにとって新しいチャレンジとなった事はありましたか? それはどんなことですか?


ジェイ・Z ああ、新しいフロウっていうことはあるだろうな。いつも音楽に導かれるままにフロウも変わるから、新しいサウンドがあればそれに合わせてフロウも変わるし。今回も新しいフロウを呼べるようなものは幾つかあるんじゃないかな。

——歴史もありビッグ・アーティストもたくさんいる〈デフジャム〉のトップの座を離れて、敢えて1から新しいスタートを切ろうと思ったのはどうしてですか? 「D.O.A.」のような曲を発表した意図とも関連して、”原点回帰”、”全てリフレッシュして再スタート”、のような動機ですか?

ジェイ・Z 〈デフジャム〉を辞めたのは、アーティストとしての自分とか、〈ロカウェア〉や〈ライヴ・ネーション〉とのビジネスとか、色々やらなきゃいけないことがある中で、あのポジションに全力を注ぐことが難しいと感じ始めたからだよ。LA(・リード)とは沢山ヒットも産んだし金も儲けたし、良い経験になったけどね。

 感謝してるよ、本当はあと1枚アルバムを出す契約になってたから、ヤツらは俺が〈デフジャム〉を離れることを止めることも出来たんだ。で、俺はダグ(・モリス、〈ユニバーサル・ミュージック・グループ〉の代表)と話して、ヤツは違反金としてある額面を提示してきて、俺はそれよりもちょっと少ない額で交渉してたんだけど、最後はコインをフリップして俺が負けた。予定よりは多めに払ったけど、その代わりに自由を手に入れたからな、自由に替えられるものはないだろ?

——あなたは6月3日に、ご自身の『Twitter』で、「I Will never have a “record deal” again」と言っていますが、この真意は?

ジェイ・Z アレは俺が書いたんじゃない。俺の考えとシンクロしてる他の誰かがやったことだよ。

——でもそれを公表することを承認してる訳ですよね? かなりの発言ではあるし、やはり真意を教えて頂きたく。

ジェイ・Z 俺がどこか他のところで言ったことをああいう風に書かれた訳だけど、さっきの話と重複するけど、自分にとってレーベルに所属してリリースする、っていうことは、他のビジネスと足並みが揃わなくなるからだよ。アーティストっていうのは常に前に進むべき存在で、俺にとっては「レコード契約」という形を取ることは他のことと矛盾することになるんだ。自分のレーベルで自分の好きな様にやれる状況にあるなら、なおさらね。

——今回のアルバムを〈ワーナー・アトランティック〉からディストリビューションすることになった経緯は? やはり旧知のリオ・コーエンとの”リユニオン”、”原点回帰”的要因もあるのでしょうか?

ジェイ・Z ああ。これもまた「フル・サークル」っていうことになるんだけど、旧知のヤツらと組むことでまた元の場所に戻って来た、っていうかね。自分が本当に好きなヤツらと仕事ができるっていう今の境遇は、本当に恵まれてると思う。カネのためじゃない、最高額をオファーしてきたとかそういうのは関係ない、っていうかオファーも何も、っていうレヴェルだよ。
 
 ただ1つだけ考えなきゃならなかったことは、ディストリビューションの形態を昔ながらのやり方でやるか、それともヴィデオ・ゲームやインターネットという形でやってみるか、そのヘンだけは考えたけどね。だけど従来のやり方を選ぶなら、自分が成長を共にしてきたヤツらと快適な環境でやることにしたんだ。

——ちなみに、今回〈アトランティック〉から出るという情報は、『twitter』で〈アトランティック〉の幹部が書き込みをしたのが発端、と報道にありました。最近、『twitter』を代表する新しいコミニケーション・ツールを通じて情報を発信し、プロモーション的に活用するアーティストが多い気がしますが、あなた自身はこのような、新しいメソッドをどのように考えていますか? 積極的に活用したいと思いますか?

ジェイ・Z 素晴らしいと思うよ。誰もが新しいツールを積極的に利用できるべきだと思う。繰り返しになるけど、これもまたクリエイティヴであるとか、革新的であるためには重要なことだと思うし。『facebook』とか『twitter』とか、そういうところで情報を発信したりしてね。

 ただ、そこで書き込まれた内容は気に入らなかったけどな(笑)。まるで俺が〈アトランティック〉と契約したみたいな間違った書き方だったから。だけどそれがあらゆるところに瞬時に伝わって、まさにそれがそういうツールの威力だろ? 『AP通信』までが飛びついたんだぜ。誰かの『twitter』からそこまでの主要メディアに飛び火するなんて前代未聞だよな。

——『twitter』では誰かの書き込みを追って(フォローして)いますか?

ジェイ・Z フォローって言うんだ?(笑)。俺は誰もフォローしてないよ。たまには誰かの書き込み(注:『twitter』用語ではtweetというのだが、ジェイ・Zはpageという昔懐かしいオースク用語を使用)を見たりはするけど、フォローはしてないよ。

自分が情熱を感じていることが全てビジネスになってるんだ

——〈ロカ・ネーション〉が既存のレーベルと違う点は何ですか? 〈ライヴ・ネーション〉とタッグを組むことで、あなたが感じている新しい可能性とは何ですか?

ジェイ・Z 自由だね。〈ロカ・ネーション〉は色んな部門で成り立ってるんだ。音楽はもちろん、出版、マネジメント、っていう風に、単なるレコード会社じゃなくて、アーティストが必要とすることは全て自前で調達出来るようになってる。映画がやりたいなら実現できるし、香水とか洋服ブランドをやりたいならそれもオーケーだし。アーティストが人生で何かやりたいと考えるようなことなら何でもね。それに俺達が雇う人間もそれぞれの分野のエキスパートなんだ。アパレル、マーケティング、それからA&Rも。自前で足りない部分は外部と提携していくし。

——アーティストにとっては実に理想的なレーベルじゃないですか。

ジェイ・Z まあ、そうだろうね(笑)。ラッセル・シモンズは俺にとってゴッドファーザーで、彼は92年に〈ファット・ファーム〉を始めたけど、俺が98年に〈ロカウェア〉を始めた時にはラッセルに話をしに行ったんだ。彼は俺のメンターだからね。当時の俺のパートナー達に最初に紹介してくれたのもラッセルだし。

 俺は彼のブループリント(注:とそこで自分の十八番フレーズが出たことに対し苦笑)を辿ってるとも言えるな。ラッセルは色々と用途別に会社を設立して同時に経営してたけど、俺はそれを全て1つの会社に収める方がやりやすいと感じたんだ。これはカルチャーだからな。

 朝起きて、音楽をかけて、シャワーを浴びたり、TVを見たり、服を着たり、それは全てカルチャーだし、スポーツ・バーにも行くならそれも欲しいし。全ては俺の人生の一部なんだ。俺の周りの出来事が成功しているのは、俺はその全ての要素とちゃんとつながっているからだよ。自分が情熱を感じていることが全てビジネスになってるんだ。

——〈ロカ・ネーション〉の今後の展望についても教えてください。どんなアーティストのどんなリリースを予定していますか?

ジェイ・Z ロンドン出身のリタ・オラ、J・コールっていう女性ラッパー、それからリアーナとかニーヨのプロデュースをしたスターゲイトとのベンチャーも。そこからはレインっていうシンガーを出すよ。そこのジョイント・ベンチャー・レーベルにはかなりのライターやプロデューサーが所属してる。

 それから〈ロカ・ネーション〉はワーレイ、メラニー・フィオナのマネジメントもしてる。そういうのは「これがジェイ・Zの手掛ける……」みたいに公に発表するよりも、自然と情報が広まっていくままにしておいて、俺達はむしろ仕事や音楽に集中していくつもりだよ。

 リリースの予定は分からない。全てが同時進行してるけど、音楽のプロセスっていうのはデッド・ラインでがんじがらめに出来るものじゃないし、期日を与えたからと言って、それまでに準備が出来なかったら? スタジオに入ってからの仕事のスピードも人それぞれだからね。誰のアルバムが先に出るかは今はわからないね。

——ニュー・アルバムをリリース後の予定について教えてください。世界ツアーなど計画はありますか?

ジェイ・Z ああ。ツアーは好きだよ。外に出て音楽をプレイするのは良いことだ。今ロンドンでコールドプレイと一緒にやるツアーの日程を固めてるところ。それからUSにも来る予定。それから秋から春にかけて世界ツアーに出るつもりだよ。

——今、注目しているアーティストは誰ですか? あなたから見て次代を担うべき、と思えるアーティストはいますか?

ジェイ・Z 先のことは分からないけど、スタートに立ってる時点のヤツらを見て、っていうレヴェルで言うなら、ドレイクはかなり先頭の位置につけてると思うし、キッド・カディもイイ線いってる。ワーレイもいいし、ロックじゃMGMTとかキングス・オブ・リオンもかなりイイ線いってるだろうな。かなり特別な存在になると思う。それからMIA……彼女のことは今言った残りのアーティストと同じレヴェルで語るつもりはないけど、かなりユニークで新しいことをやってる、っていう意味でね。

——オバマ大統領が誕生したことで、キング牧師がかつて演説した「I have a dream that one day…」や、今までヒップホップのリリックでも歌われていたメッセージが現実のものとなった感がありますが、オバマ大統領誕生によってヒップホップそのものにも影響があると思いますか? あるとしたら、どんな影響でどのように変わっていくと思いますか?

ジェイ・Z 今キミが言ったセンテンスの主語が「We」だったろ? そういうことだよ。世界中のヤツらが、自分の大統領がオバマなんだ、って考えてるんだ。そのことが世界中に与えている威力の偉大さは計り知れないくらい素晴らしいことだ。

 そんなインスピレーションはオバマが大統領になったっていうことでしか生み出せないものだったと思う。もし彼が選ばれていなかったら、今頃世界は全くの別物だったと思う。それまでは世界中が分断されて、あちこちに壁が作られて火花が散ってたけど、今は世界中が1つになって——もちろんダメなヤツらも何人かはいるけど(笑)、祝福したり主張できるようになったんだ。「We」ってのはビューティフルだよ。

——今、ヒップホップに必要なものは何だと思いますか?

ジェイ・Z 恐れないこと。ヒップホップ・アーティストは特に、失敗しないことに腐心して、安全で必ず売れるものに靡いてる風潮がある。「女向けの曲を作ろう」とか、「こういうタイプの音楽を」とかね。音楽はそういうものであるべきじゃない。音楽は感情から来るべきものなんだ。音楽が自分をこういう気持ちにさせる、この音楽では自分はこれが言いたい……っていう風にね。そうすれば全てはついてくるよ。
 

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『ザ・ブループリント3』
ジェイ・Z
9月23日発売
〈ワーナーミュージック・ジャパン〉

トレイ・ソングス インタヴュー

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 今年公開されたラヴコメ映画『お買い物中毒な私』に、新曲「Take Time To Love」を提供したトレイ・ソングスのニュー・アルバム『レディ』が到着。フィーチュアリングには、ドレイク、グッチ・メイン&ソウルジャ・ボーイ、ファボラスが参加。11月には来日公演を控えた彼のインタヴューを。

取材協力 Yasuko Ito


――ソウルな路線だった1stアルバムから、前作ではメインストリームよりになりました。今回のアルバムは音楽の方向性も前とはちょっと違いますね。ジャンルがオープンになったというか、ロックとかもやっているようですが。

ソングス そうなんだ。ひとつのジャンルにこだわらず、いろいろやりたいと思ったんだ。前からいろいろな音楽を聴いてるし。そこがオレのアーティストとしての個性だとも思うし。それに、オレがアーティストとしてひとまわり大きくなったことの証でもあると思う。

——前作からの「Can't Help But Wait」はなかなかのロング・ヒットになりました。今回はああいうタイプの曲が期待できるんでしょうか?

ソングス あの曲は明るい曲だし、クラブとかでも盛り上がるし気分が上がる曲だからきっと受けたんだと思うな。素直でポジティヴな内容だからいつ聴いてもいいし……。今回もそういう曲をいっぱいやってるよ。

——新作の中で、ファンに特に注目してほしいポイントがあれば教えてください。

ソングス どの曲も最高っていえるくらいレヴェルの高い曲を揃えてるんだ。だから、アルバムの最初の曲から終わりまでとおして何度も聴いてほしいし、そういうアルバムに仕上がってると思う。

——ヒップホップ好きという点を思い切り打ち出して、ミックス・テープやフリースタイルをどんどんリリースしてますね?

ソングス そうなんだ。オレはこれまでの「R&Bシンガー」っていう枠の中に納まっていたくないんだ。自分がいいと思ったら何でもやる。正規のリリース以外のアルバムではやらない、とかそういう気持ちは全然ないから、チャンスがあればどんどん自分を打ち出していきたいと思ってるんだ。ありきたりのことはしたくないんだ。それに、オレ、ヒップホップがすごく好きだからそういうスタイルも好きなんだ。ずっとヒップホップばかり聴いてたんだけど、トロイ・ティラーと知り合ってから、彼からR&Bに感化されたって感じなんだ。彼に教えてもらってダニー・ハサウェイとかマーヴィン・ゲイとかを聴くようになったし。

——最近歌ったフリースタイルの自信作は、誰のどのトラックですか?
サントラ収録の「Take Time To Love」はクリス・ブラウンも歌っていましたが、結局あなたのヴァージョンが正式リリースされましたね? 自分のヴァージョンではどこが良かったと思いますか?

ソングス あれは、クリス・ブラウンがスケジュールの都合で曲を完成できなかったんだ。それでオレに話がきて、たまたまスケジュールも空いてたし、快く引き受けたんだ。それに、クリスはあのサントラで他の曲を収録することが決まっていたし、多分あまりひとりのアーティストが露出しないようにレコード会社が取りはからったんじゃないのかな。クリスのレーベルもこの曲を許可しなかったみたいだし。結局、オレのヴァージョンを気に入ってくれたみたいで正式リリースになったんだ。

——「Brand New」のヴィデオでもたくさんのラップ・スターがキャミオ出演していましたが、今お気に入りのラッパー/ビート・メイカーは誰ですか? それぞれ教えてください。

ソングス あのヴィデオにはたくさんゲストが出演してるんだよな。ジム・ジョーンズ、ファット・ジョー、DJカーリッド…….。好きなラッパーは断然ジェイZ。他にはビギーとか2パック。ナズとかも好きだけで、どちらかというとオレはジェイZ派だね。彼のラップ・スタイルが好きだし、デビューしてから現在までずっとトップの座を保ってる。凄いよね。

——ビギーといえば、彼の伝記映画、『ノートリアス』は見ましたか。どう思いますか。

ソングス よく出来てると思ったね。もちろん、権利を向こうが買って作った映画だからところどころ事実とは違う描写があったけど、それは仕方ないよな。全体的にすごくよく出来てる。特に主人公はサイコーだよ。

——将来あなたの映画ができるとしたら誰に主役を演じてほしいですか。

ソングス え?オレの映画…? それは凄いな……。誰がいいかな、いやぁ、わからない。オレの弟にでもやらせるか……(笑)。

——でも、映画になるほどの人物ってやっぱりかなりスキャンダルとかないとムリかも……。あなたはクリーンなアーティストだし。

ソングス そうか…、じゃ、オレ考えないと……、ははは(笑)。

——あなたのヴィデオには美しい女性たちが出演していますが、女性を美しいと思うポイントはどこですか?

ソングス やっぱり心だね。外見の美しさというより、内面だと思う。オレはインテリジェンスを感じさせる女性にすごく惹かれるんだ。いろいろなタイプの女性が好き。ヴィデオでもいろいろな女性を起用しているつもりだよ。毎回、スタッフの人たちがキャスティングをするんだけど、最終的にはオレが決めてる。ダーク・スキン、ライト・スキン、背の低い子、高い子、体系とかもまちまちだよ。美しさはさまざまな形があるし、絶対こうでなくちゃいけないっていう基準なんてないと思う。

——前作では一部ラップもしていました。今後もラップはしたいですか?

ソングス このアルバムではラップしてないよ。アルバムのコンセプトに合わないから。まぁ、この先またやるかもしれないけど。

——R&Bシンガーというとあくまで女の子向けというイメージもありますが、男性と女性、どの位の割合で支持されたいですか?

ソングス そりゃぁ、女性からも男性からも同じように支持されたいとは思うよ。でも、R&Bシンガーって男性から敬遠されることが多いんだよね。R・ケリーだってボビー・ブラウンだって男たちから批判されたりして、なかなか受け入れてもらえなかった時期があったと思うんだ。オレはただ自分なりにいい音楽をやっていれば自然と、みんなから支持されると信じてるけどね。実際、ライヴとかいろいろなところに男の連中も来てくれてるし、サインしてくれとか一緒に写真撮ってくれとか言われるし、結構男たちからもオレ応援されてるんだよ。それに、男ってクールぶって、オレみたいなR&Bガイのこと好きだって言ったらまずいんじゃないかって、勝手に思ってる奴も多いんだよ。実際にはもっと男の隠れファンのも多いと思うけど……。

——いま、男性R&Bシンガーはアイドル的な「歌って踊れる」路線の人が多い中、あなたはちょっと異色に見えます。自分の理想のアーティスト像のようなものはありますか?

ソングス ただ自分らしく、ってやってるだけなんだけど。冒険を怖れないホンモノのアーティストになりたいね。これまでだって偉大なアーティストって他の人がやらないこと、できないことをやっているだろ。オレもそういう意味で、オープンな気持ちでいろいろなことに挑戦したいし、それをこなせる自信もあるんだ。

——あの大御所作詞家のダイアン・ウォレンと一緒にやったそうですが。

ソングス そう、すごいだろ。それも、向こうからアプローチされたんだよ。2,3曲デモを送ってくれてその中の一曲が気に入ったからやることにしたんだ。「No Need To Cry」ていうすばらしい曲だよ。こう、スケールが大きいんだ。ロマンチックだよ。そんなすばらしい曲だからレコーディングの時もその曲に「命を吹き込む」ことに専念した。自分の感情を移入することによって、初めて曲が生きてくるからね。自分にとってチャレンジした曲でもあるんだ。

——今回のプロデューサーはどういった人たちですか。

ソングス ジャメィン・デュプリともやってる。彼、今回のバウワウのアルバムもプロデュースしてたし、その流れでオレもバウワウの「I Ain’t Playing」に参加してる。だけど、オレのアルバムには誰もゲスト参加はしていないんだ。もしかしたらリミックスとかにフィーチュアするかもしれないけど、あくまでもオレの作品っていうことでゲストは入れてないんだ。他にはブライアン・マイケル・コックス、エリック・ハドソン、ショーン・ギャレット、もちろんトロイ・ティラーもプロデューサーとしてやってもらってる。エグゼクティヴ・プロデューサーはジョンタ・オースチンだよ。彼もアーティストだけど、このアルバムではプロデューサーとして参加してもらった。

——好きな女性アーティストは?

ソングス 断然ビヨンセだね。彼女の声が好きだし、何をやっても一流なところがすばらしいと思う。キャリアも長いし、ずっと第一線で活躍しているところがすごいよね。彼女のことはすごく尊敬してる。彼女、マジで歌える、ホントのアーティストだよ。

——昨年はJ・ホリデーとツアーをしたりしていましたが、彼とはよく比較されていますよね。ふたりは仲がいいんですか。

ソングス うん、彼はクールな奴だし、仲良しだよ。つい先日もロンドンで一緒だったんだ。前回のツアーもうまくいったし、お互いスタイルは違うんだけどね。オレはクリーンだけどエッジがあるし、みんなから受け入れてもらってる。これからもそういう自分のイメージを大切にしていきたいし、ファンの期待を裏切らないよう努力するつもりだよ。

——アメリカはオバマ大統領になりましたが、よくなったと思いますか。

ソングス うん、すぐには変らないかも知れないけど、よくなると思う。だって、白人以外の人種で大統領になったのなんて彼が初めてなんだぜ。第44代大統領だよ。彼は少なくともがんばれば何でもできるということを証明してくれた。それはオレたちにとってすごく大きな希望なんだ。どんな夢も叶うってことなんだよ。

——確か、日本にも行ってますよね。ファンの人たちの印象はどうでしたか?

ソングス やっぱり(アメリカのファンとは)違うなって思ったね。日本の人たちのほうが感謝の気持ちを素直にだしてくれるし、暖かいなって思った。多分、ほとんどの人たちが英語の歌詞とかわからないと思うんだけど、音楽を通じて心が通い合う、そういういい体験をさせてもらった。今回ももちろん日本に行くつもりだよ。ショッピングが楽しみだな。オレ、めちゃくちゃ買い物好きなんだ。

 

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                                                 『レディ』トレイ・ソングス/9月30日発売
                                                  〈ワーナーミュージック・ジャパン〉

マックスウェル・インタヴュー

 1曲目の「Bad Habits」。アコースティック・ギターの静かな始まりから、ジワリジワリとグルーヴが交ざっていき、パーカッション、ブラスとのアンサンブルが、〈君のおかげで、制御できなくなるのさ、そのことで頭がいっぱいになるのさ〉というセクショナルなリリックと相まって高めていく。

 「Cold」は、ミドルな4つ打ちもの。パーカッシヴに舞うドラミング。〈君はどうしてそんなに冷たくなれるんだい?〉と懇願するリリッムの性急さをサウンドは補完する。

 

 「Help Somebody」は、〈夢をかなえるために手を貸してやれるような男になる手助けをしてくれ〉というラインの後、〈聖歌隊、歌ってくれ〉の直後のブラスのフレージングがものすごい。

 

 全体的な質感は、ジャズ。決して、4ビートだったりするわけでなく、ジャズ感。鋭角でなく滑らかな曲線。即興演奏があるわけでないが、自由な感じ。ひたすら開放されていく自分がいる。長いブランクを経て、マックスウェルが新しい地平に行ったことは間違いのない。

 

 またも、この質感のサウンド、流行るのではないか? 嬉しいことであるが。(jiro yamazaki a.k.a. jay-brown)

 「完璧に仕上げたい」という想いが最初にあった。出来上がってゆくプロセスで、確かに誤解なんかもあった。でもそれらの誤解は、今から思い返せば、「完璧」へと導いてくれる標(しるべ)だったんだ。

 「人生は生きることが先決で、意味づけるのは後でいい」。僕はそう信じている。このアルバムで学んだんだ。もっとも大切なのは、全員のピッチを一斉に合わせる、とかじゃなくて、みんなのエモーションが通じ合うこと、それなんだって。

 クリエイティヴな面で、自分が満足出来る作品を作り上げたい。だからこそこのアルバムにも意味がある。ここ数年、浮き沈みの激しい私生活を送ってた。男女関係なんかも含めて。そして僕は大人へと成長を遂げた。

 とても特別なアルバムなんだ。確実に今までのものとは違ってる。その違いは「大人」になった僕なのかもしれない。単に「男らしさ」に頼って、アイデンティティを確保しようとしてるんじゃなくて。

 感じてほしいのは「僕はそこにいる」という存在。そしてその存在は、大好きなアーティストの大好きなレコードとか、僕が共感してきた彼らの音楽、そして彼らの生き方、それらすべてが合わさって出来上がっているのかもしれない。


 『”ブラック”サマーズナイト』は三部作なんだ。“BLACK”と“SUMMERS”と“NIGHT”の3枚。1stは過去について歌ってる。つまづいたり、立ち上がったりしながら得た発見や学びなど。
 2ndは、現在のこの瞬間を味わっているというもの。希望に満ちていて、気分を高揚させてくれる。ダークな1枚目とは対照的。
 
 3rdの“NIGHT”はインストゥルメンタルが主。スロウなメロディーに乗せ、愛を歌ってる。最愛の人を愛して、抱き合い、そしてそれを聴いてる人たちも涙を流してくれれば、僕にとって最高に嬉しいことだよ。


 「Pretty Wings」は、大切な人を手放すことについて歌ってる。本当は別れたくない、だけどそうするしかない。タイミングが悪かっただけなのかもしれない。そして2人は別々の道を歩んでゆく。

 もしかするとまた、元通りになれるかもしれない。例え戻れなかっても、「天がそう仕向けてくれたんだ」と受け入れられる。そして2人は大きな決断を強いられる。

 ライヴ・ショーは僕の世界観を変えてくれた。仲間のホッドやみんなもそう思っていると思う。ライヴで、僕たちの新しい側面が引き出された。

 例えば、ある特定のシティー(街)を思い描いて、「そうなんだ、この雰囲気を求めていたんだ」って感じられたり。

 その興奮、ライヴ特有の雰囲気、そんなものをアルバムに込めることが出来た。この『”ブラック”サマーズナイト』で、もっと根っこにあるパワーのようなものを出せたと思う。

 ステージではあまり考えないようにしてる。例えば60%はリハーサル通り、あとの40%は成り行きに任せる、みたいに。それはアルバム作りにも似てると思う。この5日間、みんなと一緒にやった曲作りにも。

 役割分担は予定通り、だけど曲のニュアンスや雰囲気は、どこからともなく現れたり。僕も含めて、ホーン、ベース、ギター、ドラム、みんながそれを感じていた。素晴らしい経験だった。

 意識していないのに生み出されるもの。そんな瞬間は幸せだね。まるでジャズに似ているね。演奏している最中は「考え過ぎない」「意識し過ぎない」って。神、そんなものが降りてきた時のため、風通しをよくしておく、っていうのは大切だね。みんなそれぞれが僕にとって特別なミュージシャンだね。

 彼らの演奏を聴いて、「ここをこうしてほしい」とか僕が少しアドヴァイスするだけで、僕の思い描いてたままの曲にしてくれる。まるで役柄を完璧に知りつくしてる映画俳優のようにね。

 「Help Somebody」は「救いの手を差し伸べる」っていう曲。この時代に生きる僕たちは、他人事を他人事で片づけちゃいけないと思うんだ。自己中心的な考えは捨てて、1人の人間として成長することを歌ってる。

 「Stop The World」だけど、ストーリーが曲によって伝えられる、ってのは素敵なことだね。聞き手は、物語の真相を知ってるわけじゃない。でもそれに共感できるんだ。この曲にしても、男性なら誰でも経験があると思う。最高の女性を前にして、今それが起ころうとしてる瞬間、「時間を止めてくれ(世界よ、止まってくれ)」と思う素敵な瞬間。

 もうすぐ完成を迎えてる。いよいよだね。あとはミュージシャンの仲間たちと共に、「完璧」に仕上げるだけさ。僕たちが抱いた「夢」に向けて。みんなと交わした「約束」を果たすため。

 「君はどんな“約束”を交わした?」。ミュージシャン、画家、ディレクター……。現在の君が何になっていようと、君はみんなとある「約束」を交わしてた。その「約束」というのが、原点の君自身だったんだ。そして僕は今、その約束と一体になれている。僕が『アーバン・ハング・スイート』を通して交わした約束とね。

 そして今回のアルバムで、みんなに喜びを感じてもらいたい。特に今それが必要な人たちに。「“あの感覚”はまだ残されている」、「まだ“あの雰囲気”を感じることが出来る」。そう思ってほしいから。シンプルに聞こえるかもしれないけど、このアルバムを、気に入ってもらえると嬉しいよ。

『”ブラック”サマーズナイト』
マックスウェル
発売中
〈ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル〉


 

paris matchインタヴュー

 

 対話 jiro yamazaki a.k.a. jay-brown

 ヴォーカル、ミズノマリのソロ・アルバムに続いて、8枚目のアルバムがリリース。ミドル&メロウな「プラネタリウム・シンドローム」、疾走感溢れる「ヨコハマ・シティ」、ネオアコ・フレイヴァーの「HAPPY HAPPY WEDDING」、高速ボッサの「公園へ行こうよ」、4ビートの「FREE」、サンバな「サマー・オブ・エレクトリック・シティ」とカラフルでチア・アップする夏的サウンドが気持ちいい! メンバーのミズノマリと杉山洋介に話を訊きました。


brown どんなイメージで作られたんですか?
 
杉山 元々「夏のイメージがある」って言われてたんですけど、意外にも夏にリリースしていなかったな、と(笑)。『type Ⅲ』(3rdアルバム)、『QUATTRO』(4thアルバム)とかが6月リリースで、夏のドライブや避暑地にピッタリというイメージがあの頃ついたわりには、『after six』(6thアルバム)は夜をテーマに出したり、『Flight 7』(7thアルバム)は真冬の2月に出たりとか、その間にカヴァーも挟んでたんです。夏前にリリースというのは『♭5』(5thアルバム)以来で久し振りだったので、「夏に出したい」ということに標準を合わせました。
 
  あとマリちゃんが2ヶ月くらい前にソロ・アルバムを出すということで、そっちの作家陣がものすごい人たちだったんで、こっちは杉山洋介らしさがより濃く出 ればいいかなと思って(笑)。マリちゃんの作品もレコーディングがほぼ出来上がっていたんですけど、こっちのアルバムが出来上がるまでは僕は聴かないよう にしました。聴いちゃうと変に意識してしまうので、「俺は俺でいいや」って、自由にやりました。
 
brown 「待ってました!」なサウンドで。マリさん的には区分けを意識しましたか?
 
ミズノ 意識というよりは、『mariage』の時はいろんな制作過程の勝手が違っていたし、1人じゃなく複数の人で作っていったのでそれに合わせました。
 
 例えば他のアーティストから「フューチャリングお願いします」と言われた時には、「paris matchの ミズノマリさんの歌い方」みたいなものを求められている事が多いので、いつもの感じでやるんです。でも、今回は作家さんがプロデュースまでするっていう形 でお願いをしているので、彼らのディレクションに私が合わせて行きつつも、自分らしさを壊さぬように、というせめぎ合いみたいなものがありましたね。
 
brown そんな複雑な(笑)。
 
ミズノ だから逆にparis matchでは、当たり前ですけどすごくリラックスできて、何のストレスもなくいつもの感じでより一層歌えたかなと思います。
 
brown ちなみに聴かずにいたソロ・アルバムを聴いて、どうでしたか?
 
杉山 全然違うなと思ってホッとしました。良い悪いじゃなくて、違うということが気になっていたので。「これならミズノマリは、もうparis matchやる必要ないじゃん」っていうものが出来上がってたら、俺はもう社長業に専念しようかなと(笑)。
 
brown よくありがちな、最初は男女デュオだったのが、だんだんと男性が後方支援にまわっちゃうみたいな(笑)。
 
杉山 そういうこともなく(笑)。paris matchの音楽に耳を傾けてくれなかった人たちが、これをきっかけに「聴いてみようかな」ってなれば万々歳ですね。
 
brown ソロ・アルバムが4月発売で、内容的にしっとりした曲が多かったでしょ。paris matchが6月発売で、こちらはパンと弾けてるから、いい感じで前哨戦になった感じがしました。これが逆だったらあれですけど。
 
ミズノ ああ、確かに。
 
杉山 でもやっぱり、それなりにプレッシャーはかかりましたよ。
 
brown でも改めて、この『mariage』があった分だけ、『Passion8』を聴いて、これはこのコンビじゃないとできないんだなってより思いましたよ。
 
杉山 それが狙いなんです(笑)。
 
brown メロディ、アレンジ、詞、その中のヴォーカル全部でparis match は完成してるんだなと思いました。曲調もヴァラエティに富んでますね。
 
杉山 そうですね。いつも倍くらいは作るようにしてるんです。
 
brown いつも倍作ってるんですか? どんな段階まで?
 
杉山 作ってます、簡単な方向性が見えるアレンジと「ラララ」が入っている感じで。
 
ミズノ ある程度曲の方向は見えるアレンジですよね。
 
brown そこから半分にしちゃうんですか。そんな作り方してるんだ。
 
杉山 そうです。過去から復活する曲もあるし、新しく作った曲も含めて20数曲ある中で、それぞれに聴きこんでもらって。ノー・チェックな曲は×だろうなと(笑)。
 
ミズノ バツじゃないけど(笑)、どうしてもやりたいのには◎とかつけます。
 
杉山 あまり客観的に見れないんで、どうしても自分の思い入れのある曲をやりたくなってしまうんですよね。選曲に関しては、逆に俺からすると「えっ、この曲?」っていうのもあります(笑)。
 
brown ちなみにどの曲ですか?
 
ミズノ 11曲目の「本当は言いたくないけれど」です(笑)。
杉山 俺的には、本当はやりたくないけれど(笑)。
 
brown そうなんだ(笑)。ミズノさんの◎はどれだったんですか?
 
ミズノ まさしく「本当は言いたくないけれど」は、「これやりたーい」ってね。みんなに聴かせても「こういう曲あった方がいいですよ」って言ってました。あと8曲目の「空っぽの君と僕」とかも。
 
杉山 そうすると、なんとなく濃いものに自然になってしまって、箸休め的なものが段々……。
 
ミズノ いつもレコーディングを、前半戦と後半戦に分けることが多かったんですよ。前半戦は5、6曲で、例えばタイアップのついたものとか、このアルバムのリードにしたいなっていう、ちょっと勢いのあるものを作っておいて。
 
 後半はちょっとゆるいボサノヴァとか、味付けのジャズ系のものとか分けてやるんです。だから後から「足してみよう」って洋介さんが作ってみたりとか、味付けのあるものを選ぶんで、いつもはなんとなくそれでバランスが取れてた感じなんです。
 
 でも今回は、最初からほとんど濃いところをドーンと決めてしまって。
 
杉山 最初から11曲ぐらい「これはマスト」、みたいなの決めちゃったので、遊べる場所がない(笑)。
 
brown 僕的DJプレイは「プラネタリウム・シンドローム」ですね。
 
ミズノ あー好きそう、ミドル&メロウな感じで。
 
杉山 男性陣はみんなそれなんですよ、特に中高年は(笑)。僕もそれなんです(笑)。
 
ミズノ うちのスタッフも中高年の人はこの曲(笑)。
 
杉山 大体偉い人系はそれなんだよ(笑)。
 
brown ちなみに押し曲は?
 
杉山 このジャケで、久々の夏の発売で、「プラネタリウム・シンドローム」はないだろう、という結論になりました(笑)。
聴く側もすげぇ期待してたのに、「……メロウやん」って(笑)。
 
brown 僕の中では、ジャケが夕方で、シャンパンだから、爆発系というよりは、大人の夏のサンセット・タイムのイメージで、メロウだなと思ってます。
 
ミズノ 両方捉えられる感じの雰囲気だと思います。
 
杉山 ダイレクトに「Passion8」、と普通に考えちゃうと違う。うちらの中では、「夏のサンセットからの燃え上がるような恋」みたいなとこだったんです。
 
brown そこですよね、ちゃんとキャッチしてます(笑)。
 
杉山 この世代しか分からない(笑)。
 
brown 「そう きっと」の歌詞が良いですよ。
 
ミズノ ありがとうございます。
 
brown 〈ねぇもっと〉で成立しちゃうってのがね。
 
ミズノ その部分から入りましたね。ヴォーカリスト目線で、「♪ねーえ」みたいな感じで歌いたいなってとこから入ってるんです。
 
brown 〈夢の続きと未知の奇跡が 交わり始める時期まで〉というフレーズもいいですしね。「寝ても醒めてもあなただけなのに」もいいんですよ。なんか『mariage』で書いて、歌詞書くのを開眼したんじゃないですか?
 
ミズノ 思いきり自分目線で書いていたので、その後にparis matchの方を書くという風に頭の転換をするのが、去年『Flight 7』を書いた時と全然違う感じで書けましたね。(6月16日/渋谷にて)
 
『Passion8』
paris match
発売中
〈アミューズソフトエンタテインメント〉
www.coolism.com/parismatch

 

ローラ・イジボア・インタヴュー

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 テキスト jiro yamazaki a.k.a. jay-brown

 70’sのよき〈アトランティック〉レーベル発のソウルの手触りがある新人だと思っていたら、〈アトランティック〉からのリリースだった。アイルランドはダブリンの生まれの21歳のシンガー・ソングライター。打ち込みではなく、ストリングスとブラスを多用したアレンジが気持ちいい。プロデュースも本人がおこなっているということは、彼女のセンスであるということ。

 「私が歌い始めたのは13歳の時で、きっかけはほとんど事故みたいなことだったの。授業中に先生から、立ち上がって歌うように言われて……私は追い詰められて、『お願い、私歌なんか歌えません、勘弁してください』って言ったんだけど、先生はどうしてもやらなきゃダメだって言ったの。

 それで私がホイットニー・ヒューストンとマライア・キャリーの曲を歌ったら、周囲のみんなから凄く褒められて、あんたの歌はホンモノだって言われて……私はその日、走って家に帰って母に『ナンだか私、歌が歌えるみたいなの』って言ったの。すべてはその日から始まったのよ。私の受けてきた影響は、ソウルフルなものなら何でも。

 私のアーティストとしての持ち味もそういうものだと思うし、私自身が耳にして即惹かれるのがそういう音楽なのよ。私が好きだった、オーティス・レディングとか、ジェームス・ブラウン……。JBはラジオから聴こえてきたのを初めて耳にした時に、『わぁ、私この人の歌い方が好き』って思ったのを覚えてるわ。

 基本的にオールド・スクール系のシンガーが多いかも。でも私にとってはみんな、とても純粋な歌世界を持ってる人たちなの。私は昔からずっと、色んな意味で他人と違う、ユニークな存在だったのよね。

 アイルランドの私の育った辺りでは黒人はとても珍しかったし、名前も、髪型も、いつだって似てる人なんか周囲に1人もいなかったわ。で、そういう生い立ちが私の音楽には出てると思うの。私の音楽はある特定の時代とか、今流行ってる誰かのスタイルに追従したりはしてない。他の誰とも違ってる、私のオリジナルなの」

『素顔のローラ』
ローラ・イジボア
6月24日発売
〈ワーナーミュージック・ジャパン〉
http://wmg.jp/lauraizibor

ダニエル・メリウェザー・インタヴュー

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 テキスト jiro yamazaki a.k.a. jay-brown

 新しいプロデュース・ワークから目が離せないマーク・ロンソン。が、彼がエイミー・ワインハウスのプロデュースでブレイクする前、まだNYでDJをおこないつつ、チャンスを窺っていた頃、オーストラリアから届いた1本のデモ・テープ。白人ながらソウルフルなダニエル・メリウェサーの歌声にヤられたロンソンは、彼を世に送り出すべく、〈J Records〉と共同で〈Allido Records〉を設立。

 07年リリースのロンソンのアルバム『ヴァージョン』のシングル「ストップ・ミー」でまずfeat.。そして、満を持して、デビュー・アルバム『ラヴ&ウォー』を今リリースする。これが当然と言うべきが、ヤバい仕上がり。既にジャスティン・ティンバーレイクやカニエ・ウェストのライヴ・オープニング・アクトも経験済。ミドメロのニュー・カマーです。

 「当初マークは2、3曲だけをプロデュースする予定だったんだけど、『どうせなら全部2人で一緒にやろうよ。ちゃんと必要なだけ時間をとって、いいアルバムを作ろうじゃないか』って提案したら、彼も乗り気になってくれて、じっくり2人で向き合って作り上げたんだよ。僕は、弁証法に深く興味を抱いているんだ。対極にあって反発し合う力が1つになった状態とか、対極にある2つのものが衝突した時に起きる摩擦みたいなものとかにね。

 で、『ラヴ&ウォー』というタイトルは、人間の行動に関する僕の考察を総括しているんだよ。人間そのもの、あるいは人間同士がお互いに及ぼす作用といったものに、僕は好奇心をそそられ困惑させられもしていて、アルバムに収録されている曲は全てそういう題材を扱っている。

 僕の曲の発端はいつだって、その“困惑”にあるのさ。何らかの形で人間観察に基づいていて、そして、善と悪は共存しなければならないという事実と向き合っているんだ。僕は人間のダークサイドを非常に重要なものだと思っているし、また同時に、善と悪はお互いにバランスを取り合って共存しなければならないものだと信じてる。アルバムではそういったことを歌っているんだよ」

『ラヴ&ウォー』
ダニエル・メリウェザー
発売中
〈BMG JAPAN〉
http://www.sonymusic.co.jp/danielmerriweather

Leyonaインタヴュー

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 対話 jiro yamazaki a.k.a. jay-brown
 
 THE TIMERS、井上陽水、THEATRE BROOK、G.Love & Special Sauce、HIFANA、斉藤和義、Kiroro、Spinna B-ILL、RCサクセション、仲井戸”CHABO”麗市、そして新曲という感じでまとめられたカヴァー・アルバム『MUSICISMAGIC』。アー ティストのルーツが分かるカヴァー。見事なくらいに繋がるラインアップ。そして、Leyonaのグルーヴになっているから、カヴァーってやっぱおもろい。
 
 「デビュー10周年ということで、今回のカヴァー・アルバムは、この10年間に交流をもってセッションして来た方々の曲ばかりなんですよね。基本的に、私 はやっぱり洋楽で育ったので、邦楽で言うと、一番は『デイドリーム・ビリーバー』。モンキーズがオリジナルだけど、THE TIMERS(忌野清志郎)で出会ったので(笑)。それから清志郎さんにハマっていった。それで、RCサクセションも入れたくて、『君が僕を知ってる』 も、って感じで。元々、デビューが、CHABO(仲井戸麗市)さんプロデュースだったので、そこはやっぱり外せない。陽水さんとは、井上陽水奥田民生で一 緒にお仕事させてもらって、陽水さんの色々な曲の中で何がいいかな?ってすごく考えたんですけど、『夢の中へ』がシンプルでいいなと思ってカヴァーさせて もらいました。G.Love & Special Sauceの『Stepping Stones』、ミドメロですよね(笑)。G.Loveにメールしたら、速攻で『ヒット間違いなし!』って自分で言ってました(笑)。私は高校生の時か ら、彼の音楽が好きだったんですけど、いまでは毎年会っていて、いいお兄ちゃんみたいな存在ですね。自分がカヴァーすることで、オリジナルを知ってもらう きっかけになるといいなって言うのもありますね。リスペクトという意味で。

 1曲目『STARS』は、せっかくなので新曲、オリジ ナルも入れさせてもらおうと思って。1発録りでやりたかった。たかが10年、されど10年。ここまでやってこれたのは、みなさんの力があってこそ。初心を 忘れたくない。私は田舎育ちだから、ちょっと元気を出そうって思うと必ず空を見るのがクセになっていて、私の曲の中では空をテーマにしたものはすごく多い んです。憧れていたスライ&ザ・ファミリー・ストーンの『Everybody Is A Star』という曲がとても好きで、『STARS』では、みんなそれぞれ輝くものを持っているってことを歌にしたかったんです。一緒のブースで、妹にコー ラスしてもらって、ワイワイ言いながら録った曲。これを1曲目に持って来て、最後、『ガルシアの風』で終わるというイメージは初めからあったんですよね。

 『MUSICISMAGIC』というタイトルは、自分の中でキーワードとして昔からあって。私はもう音楽の魔法にかかってしまって、ハッピーになったり、 人と出会えたりできたから。でも、自分のオリジナル・アルバムで付けるよりも、このタイミングがベストかなって。私自身、ミュージック・ラヴァーズという か、そういう想いで(笑)」(4月22日/原宿にて)
 

『MUSICISMAGIC』
Leyona
5月13日発売
〈エイベックス・エンタテインメント〉

http://www.leyona.net

坂詰美紗子インタヴュー

 

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 対話 jiro yamazaki a.k.a. jay-brown



 「Queen of middle and mellow」として去年のデビュー以来、推しまくっている坂詰美紗子! 新しいミニ・アルバムも相変わらずのクオリティの高さ。最近主流の切な系の「運 命のふたり」も、坂詰がやるとやはり一味違う仕上がりに。〈過ごしてきた日々はイミテーション? 違うよね 信じてるモチベーシション〉なんてラインもい い。「キレイ好きに見えるように」はバウンシー系。自分の部屋に初めてその男子を呼ぶ際の気持ちを綴ったリリック。〈本当は部屋は汚くて いつもゴロゴロ してばかり 本当の私はもうちょっとだけ隠し続ける〉と、いじわる&健気な目線。Crystal Kayに提供した「涙があふれても」のセルフ・カヴァーも収録。

 
 「前回、『すぐそこにある恋』3部作の第1章と して『さよならもありがとうも言えない』というシングルをリリースしたんですけど、カップリングが『ごめ ん ねごめんねごめんね』って曲なんですね。で、会う人会う人に、『これはカップリングと合わせて第1章なの?』という質問を受けて、『いやいや、違うんだ』 と(笑)。そういうことがあったので、今回の第2章では、『アルバム全体が第2章?』と勘違いされないように、アルバムとしてかなりバリエーション濃くしたつもりなんです。ちゃんと『運命のふたり』だけが第2章だと気付いてもらえるラインナップになってると思う(笑)。


 『運命のふたり』は、第1章に続くス トーリーを意識して書きました。まだ好きだけど、強がって、『さよなら』と言ってしまった男性と、まだ好きだけど、今まで『ありがとう』ということも 言え ない女性。そんな男女の恋愛を描いたんですけど、その別れた男女がその後どんな気持ちになってるのか、相手をどう思ってるのか、というのを今回私なりに描 いたんです。よりが戻る、というのは個人的に非現実的(笑)。一度嫌いになったり浮気されて別れたら絶対に別れるしかない!という恋愛観で私は生きてるん です。そんな私だけど、違う恋愛に走るのもいいけど、やっぱり戻してあげたいという気持ちがあって。復縁に近付けたいなと思って書いてるんです。
 
 

 

 『恋のはじまり』は、今回ミニ・アルバムをリリースする上で絶対入れたかった曲。デビュー作の『恋の誕生日』を気に入ってくれてた人は、多分この曲も きっと良いと思ってくれると思うんです。『キレイ好きに見えるように』はラヴ・コメですね。これは私の最も得意とする分野(笑)。決してシングル・チュー ン ではないんだけど、坂詰美紗子らしい、ちょっとキャッチーで面白いっていう感じかな。

〈とりあえず何もかもクローゼットに押し込んだ〉というフレーズ が出た時は、『キターッ!』と思いましたね(笑)。
 
何度か出演させて頂いてる山田 優さんのラジオ番組のヴァレンタイン・デー企画で作ったのが、『sweet love』です。歌詞を大事にオケを作ってもらえて、かなり大好きな曲です、ソウル感あるけど全然古く感じないし、重みもあって、可愛くて、音数も多いわ けじゃないんですけど、このバランスが私はすごく好きですね」(4月21日/青山にて)

 
『運命のふたり』

坂詰美紗子


5月27日発売
〈rhythm zone〉

http://rhythmzone.net/sakazume

土岐麻子インタヴュー

 対話 jiro yamazaki a.k.a. jay-brown

 私、jiro yamazaki a.k.a.jay-brownが、監修&選曲をおこなっている「middle & mellow」コンピレーション・シリーズ第3弾がリリース! まずは当然と言うべきの土岐麻子の『middle & mellow of Asako Toki』。〈LD & K〉と現在所属の〈rhythm zone〉と、レーベルをまたがってのソロになってからのキャリアを包括した選曲でベスト的な1枚になりました! 5月感溢れるジャケットもいい感じに撮れました。もう1枚は、毎月クオリティ溢れる数多くのリリースをおこなっている〈P-VINE〉レーベルの、洋楽R&B音源のオムニバス『middle & mellow of P-Vine Records』です。


 ということで、彼女が在籍していたバンド、Cymbals時代から、取材してきただけに、今回のリリースは光栄だった、土岐麻子とミドメロ(middle & mellow)について訊いてみました!

brown 以前から勝手に「middle&mellow」をテーマに選曲して聴いてたんですけど(笑)。今回はついにそれが商品になったということで。
土岐 (笑)1曲目は、「ブルー・バード」から始まるというのが驚きましたね。

brownしっとりから始まって、段々グルーヴが上がる、という流れに。でも今考えたら土岐さんがソロになった04年から2年間にジャズ・アルバム『STANDARS』シリーズを3枚も出してたんですよね。
土岐 そうなんですよ、急ピッチで。この5年間そんなリリース・ペースでしたね。

brown 今思うと、あの時Cymbalsを終えて、自分なりの音楽性にトライしてみようって感じだったんですか?
土岐 最初はCymbalsと並行してソロをやりたいと思っていたので、Cymbalsとは真逆というか意外性のあるものをやりたかったんですよね。私が普段好きな音楽の中で意外性のあるものって何だろう?と考えたら、ジャズだったんです。

brown ジャズのスタンダードだけじゃなく、ポップスなど幅広い選曲ですよね。
土岐 ジャズが好きな人にとってはスタンダードでも、これからジャズを聴いてみたいなと思ってる一般の方とかいっぱいいると思うんです。でもそういう方達には、そのいきなりアレンジされたヴァージョンとかフェイク・ヴァージョンを聴いても本当の意味でスタンダードを楽しむという意味ではちょっといかないのかなと思って。実際に私自身がそうだったので。

brown 今では当たり前になってますけど、幅広いジャンルの中から選りすぐって1つの音楽性に統一してカヴァーするっていうのは、土岐さんが先駆けだったんじゃないでしょうか。
土岐 そうなんですかね(笑)。この時はそれが新鮮に映ったのかもしれないですね。

brown あとシングルでリリースされていた「PLAY OUR LOVE'S THEME」も入れさせてもらって。
土岐 これは『STANDARDS on the sofa』にも入ってるんですよね。CMソングで使われましたね。

brown ジャズ・アルバムを出した後、06年の『WEEKEND SHUFFLE』からまた新しい音楽性の扉が開いて。
土岐 これは『STANDARDS』を3枚続けて出して、2年間でそのイメージがすごくついてしまって。間に『Debut』っていうアルバムを一作品出してますけど、『STANDARDS』2枚出した後のオリジナルなので、その流れからびっくりされないようなオリジナルでと、ポップとジャズとの中間をとったような作品にしてたんです。でまた更に『STANDARDS』を出して。本当にオリジナルでやりたいのは、70年代のシティ・ポップスやキラキラしたポップスの世界ってものにすごく憧れていたので、そういう音楽をやりたいのに、なかなかここからは行きずらいなと思ったんです。リスナーを振り回す感じになってしまったり、アーティスト・イメージが定まらなくて節操がない感じになってしまうかなと思って。なので『TALKIN'』という作品を見越しての『WEEKEND SHUFFLE』だったんですよね。アレンジ的にも間をとっているし、あとはカヴァーということで同じ括りで。なので70、80年代の自分の憧れてる音楽からいろいろ選曲をして「自分はこういう者です」みたいな、「この辺の音楽に影響受けていますよ」っていうもので。

brown 『WEEKEND SHUFFLE』からは、「土曜日の恋人」、「夏の思い出」、「Sunday Mornig」、「Down Town」の4曲も入れさせてもらって。そして、07年の『TALKIN'』がリリースされた時は、びっくりしました。こういう音楽をやってくれるのが嬉しいって思って。『TALKIN'』はまさにmiddle&mellowな名曲がいっぱい詰まってるんです。そして、『Summerin'』から僕がDJで必ずかけている「小麦色のマーメイド」も。
土岐 ありがとうございます。私も最近『Summerin'』をよく聴いてるんですけど、夏のアルバムとして企画モノで作った感じだったんですけど、今すごい気分にマッチしていて。「小麦色のマーメイド」はすごく完成度の高いカヴァーになったと思いますね。

brown それから無理を言って、最新作『TOUCH』からも1曲「Let the sunlight in」を入れさせて頂きました。
土岐 ピッタリですよね、middle&mellowに。

brown ちゃんとオール・タイム・キャリアのものにしたかったので。念願の1枚ができて嬉しいです。
土岐 こちらこそ。middle&mellowっていうテーマがあって、その括りの中で選んで頂いたって形なのに、自然と私のベスト盤のような感じになっているのが、最初は不思議で。自分にとっても重要な曲がすごくいっぱい入っていたので、もしかしたら私の中で意識はしてなかったけど、middle&mellowってテーマだったのかなって感じがしましたね。(3月6日/外苑前にて)

 

『middle & mellow of Asako Toki』

発売中
〈LD & K〉

www.ldandk.com

ラファエル・サディーク・インタヴュー

 テキスト jiro yamazaki a.k.a. jay-brown

 ジョス・ストーン、ジョン・レジェンド、スヌープ・ドッグ、ディアンジェロ、ミュージック・ソウルチャイルド、メアリー・J・ブライジ、ザ・ルーツ......と、素晴しいアーティストのサウンドには、常にこの男がいる。ラファエル・サディーク。88年、トニー・トニー・トニーの中心人物としてデビュー。90年にリリースした2ndアルバム『ザ・リヴァイヴァル』は、600万枚以上のセールスを記録! 96年以降ソロになるが、03年に満を持してのソロ1stアルバム『インスタント・ヴィンテージ』をリリース。今挙げた2枚のアルバム・タイトルが予言するかのように、昨年秋、素晴し過ぎる3rdアルバム『ザ・ウェイ・アイ・シー・イット』を発表した。マーク・ロンソンが手掛けるエイミー・ワインハウスのブレイク以降、あらためてフレッシュな音となった60'sの〈モータウン〉サウンド。もちろん、〈モータウン〉のストーリーをモデルにした、映画『ドリームガールズ』の成功も寄与しているだろうが。

 今回、新しい音に敏感なラファエルが手掛けたのは、まさにそれ。が、単なるリヴァイヴァルに終わっていないのが、さすが。ちゃんと、09年仕様になっており、今フレッシュなサウンドとして聴こえてくるのだ。それが端的に出ているのが、「Never Give You Up feat. Stevie Wonder & CJ Hilton」。それぞれの時代のエッセンスが60'sに集約される、ハイブリッドなサウンドなのだ。

 「オレはレトロとか、オールディーズの昔のヒットをそのままコピーしようなんて思っていないんだ。たまたま、音楽のヴァイブがそうなっただけで、自分の中にある『楽しい音楽』を作るというのがあくまでも基本姿勢なんだから。確かに昔の古いサウンドを生かした音楽になっているけど、それは長い月日が経っても色あせない、素晴らしい音楽だからなんだよ。アイザック・ヘイズが言っていたように、『オールド・スクールもニュー・スクールもない。ただスクールに行ったか行かなかったか、その違いだけさ』って、オレも同感だね。このアルバムはオレが大好きだったミュージシャンたちへのラヴ・レターみたいなものかな? オレが感じた彼らの音楽をオレ流に表現してみました、っていう。 

 コンプレッサーとか、デルフォニックス風の効果を狙ってリヴァーヴしたり、昔っぽい音を再現してるんだ。ただ昔の機材を揃えればいいっていう単純なやり方ではできないんだよ。オレは当時のレコーディング状況も知ってるし、どうやったらそういう音を作れるか技術的なことも知ってるから、実現できたんだよ。ちゃんとした知識と技術の両方ないとダメなんだ。オレ自身純愛を信じてるタイプなんだ。彼女のことが好きでたまらなくて、廻りの人にも言わないと気が済まない。60、70'sソウルのラヴ・ソングってみんなそうだったよね。そういうヴァイブを大切にしたいという気持ちはあるよね」

『ザ・ウェイ・アイ・シー・イット』

ラファエル・サディーク
発売中
〈ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル〉
www.sonymusic.co.jp/raphaelsaadiq